世界競争力ランキング 2022(IMD):シンガポールが3位に上昇
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が6月15日に発表した「世界競争力ランキング2022」で、シンガポールが3位となり前年の5位から2ランク上昇しました。
シンガポールは1965年に建国されたばかりの国で、国土面積は東京23区ほど、天然資源はほとんどありません。中国、インド、インドネシアなど大国に囲まれた極小国であるのにもかかわらず、なぜ国際競争力を高めることができたのか、非常に興味深いですね。
今回の記事では、シンガポールの凄さについて解説します。
世界競争力ランキング 2022:シンガポールが3位に上昇 日本は?
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2022年6月22日
IMD 世界競争力ランキングとは?
世界競争力ランキングは、スイス・ローザンヌに拠点を置くビジネススクール・国際経営開発研究所 (IMD)が63カ国・地域を対象に「全体スコア」「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の5つの指標、20項目・333の基準で競争力をスコア付けしてランキングしている。
世界競争力ランキング 2022 日本は?
東南アジアでは、マレーシア(32位)、タイ(33位)、インドネシア(44位)が前回から順位を落としましたが、フィリピン(48位)は順位を上げており、日本は34位と前回の31位から順位を落としました。
シンガポールは一昨年までは2年連続で首位で、アジアの中では抜きん出て国際競争力が高いと評価されています。
シンガポールは「超・能力主義」
ではなぜ、こんなに小さな国にそこまでの競争力があるのでしょうか。
建国の父リー・クアンユー氏はかつて「シンガポールは生き残るために絶え間なく革新的でなければならないし、イノベーションは幅広い社会福祉への関心と、自助の美徳への冷徹な評価を結びつけるものでなければならない。そして全体的な視点と細かな専門知識との両方を持つことが重要だ」と述べています。
彼は、新興の極小国家が国際社会で生き残るためには、「賢くなければならない」ことを誰よりも痛切に実感しており、「超・能力主義」を掲げました。極端な実力主義の下でシンガポールは歴史を積み重ねてきており、現在でも国家のDNAに組み込まれています。
競争力の源泉
シンガポールの強さの秘訣は4つあると思います。
1.「人材活用」
シンガポールは徹底的な能力主義を採っています。具体的には、
・優秀な若者を雇用し、省庁、法定機関、その他公共組織を活性化する
・年功序列ではない
・新しい視点を持つフレッシュな人材に注目を浴びるようなチャンスを与える
・より大きな責任を与えるために彼らを教育するリスクをいとわない
など、シンガポールでは優秀な人材に対して徹底したエリート教育を行っています。
小学校6年時に全国試験を受けてその結果でその後の進路はほぼ確定し、優秀な生徒は大学進学向けのコース、結果を出せなかった生徒は職業訓練のコースに進学します。
その後もGCE(General Certificate of Education)という試験が用意されており、GCEの中で最も難易度が高く「Advanced」に合格できた生徒のみが大学に進学できます。
そして大学を卒業した人は、政府の官僚や国内の大手企業に就職し、シンガポールの経済発展に寄与します。日本では問題になりそうなシステムで人材が選抜されていきます。
2.強力に支持される指導者(政党)
リー・クアンユー氏は、経済発展のための独裁政治である「開発独裁」を行い、高度なリーダーシップを発揮しました。
シンガポールは建国以来、一党独裁が続いていて、正当な理由なく選挙権を棄権した場合、 その氏名が選挙人名簿から削除されます。また、全ての国民が投票できるように、投票日は国民の祝日と定められています。
3.イノベーション
最新デジタル革命を積極的・効率的に活用しています。
運転免許証、輸出入許、起業書類の発行など、今日ではほぼすべての政府サービスがオンラインで利用可能になっています。
4.外資誘致政策
シンガポールは建国当初から外資誘致に取り組み、主に製造業を誘致しました。
製品を国内で生産し、生産した製品を外国に輸出するという輸出指向型工業戦略によって、国内の経済を成長させていきました。
80年代後半からは外国人の高度人材の登用に力を入れ始め、国内の生産力等の強化を図ってきました。
チャン貿易産業相は、世界的競争力を備えた経済の維持を確実にするため、特にテクノロジー部門での熟練外国人労働者受け入れにオープンであり続ける必要があるとの認識を示しています。
世界の実験室
シンガポールは「世界の実験室」と呼ばれ、その取り組みは、将来、発展途上国や先進国すらも、各種の国内外問題に対する解決策を提示することになるかもしれません。
少なくとも今のところ、この国の先進的な取り組みは大成功しているといえるでしょう。