ChatGPTのプロンプトエンジニアリングを駆使してわかった! EUが採用したエンジン車向け合成燃料/eFuelの突っ込んだ部分

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小職は海外の産業調査を担当させていただいている。ITはメインフィールドであり、ChatGPTは早い時期から調査業務で積極的に活用している。またMicrosoft Bing(ChatGPTが裏で動いている)の方もフル活用している。
今回は、最近話題になったEUの合成燃料/eFuelを燃やすエンジン車は容認というニュースに関連して、Bingで深い情報を引き出してみた。Bingは根拠となるURLが出てくるのがありがたい。
(なお、以下はすべて英語による質問と回答。ChatGPT/Bingは英語圏で開発されたLLMが元になっているので、英語で質問すると精度の高い答えが返ってくる。
Bingから返ってきた英語の回答はDeepLで機械翻訳して日本語にした)

ChatGPTのプロンプトエンジニアリングを駆使してわかった!
EUが採用したエンジン車向け合成燃料/eFuelの突っ込んだ部分

著者:gram fellow デビッド・イマ
公開日:2023年3月31日

まず、合成燃料とは何かを聞いた。

問:合成燃料とは何か?
答:合成燃料は、天然原油以外から製造される燃料の一種。石炭、天然ガス、バイオマス、あるいは二酸化炭素と水素から作られることもある。合成燃料は、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料の代替燃料として使用することができる。また、すでに大気中にある二酸化炭素や排出ガスを利用するため、低炭素またはカーボンニュートラルな燃料と考えられている。
主な出典:
Synthetic fuel
https://en.wikipedia.org/wiki/Synthetic_fuel
Synthetic Fuel
https://www.sciencedirect.com/topics/engineering/synthetic-fuel

最近ニュースになったEU議会における合成燃料関連の動きを尋ねた。

問:EU議会において合成燃料関連で何が起こったか知っているか?
答:最近のいくつかの記事によると、EUは、2035年までにすべての内燃機関を禁止するという当初の計画にもかかわらず、2035年以降の自動車に合成燃料を認めることを検討しているようす。EUは、グリーン・ディールの一環として、合成燃料の基準とインセンティブを設定する法案を提案する見込み。
ドイツは合成燃料の主要な支持者の一人であり、合成燃料は排出ガスの削減と自動車産業の維持に役立つと主張している。
主な出典:
Europe Looks To Allow Synthetic Fuels For Cars After All
https://www.forbes.com/sites/michaeltaylor/2023/03/21/europe-looks-to-allow-synthetic-fuels-for-cars-after-all/
EU to Propose Synthetic Fuel Legislation Amid EV Push
https://www.fool.com/investing/2023/03/21/eu-to-propose-synthetic-fuel-legislation-amid-ev-p/

プレリサーチで把握した通り、自動車産業の声を背景にしたドイツの主張が今回の決定に影響を与えている。

ドイツではショルツ首相も合成燃料/eFuelの推進役

ドイツでは、誰が声高に合成燃料/eFuelを唱導しているのだろうか?

問:ドイツで合成燃料のメリットを啓蒙し唱導しているメインの人物は誰か?
答:ドイツにおける合成燃料の主唱者の一人は、自由民主党(FDP)の党首であるクリスチャン・リンドナー氏。
彼は、合成燃料が内燃機関と自動車産業を救うとともに、排出ガスを削減する方法であるとして推進しており、2035年までに化石燃料車を禁止するというEUの計画も非現実的で不公平であると批判している。
主な出典:
Germany’s not-so-green fix to save the car engine
https://www.politico.eu/article/how-germany-e-fuel-push-save-combustion-engine-car/
Europe Looks To Allow Synthetic Fuels For Cars After All
https://www.forbes.com/sites/michaeltaylor/2023/03/21/europe-looks-to-allow-synthetic-fuels-for-cars-after-all/?sh=684dbc1f33bb

出典で挙げられているPoliticoもForbesも信頼の置ける媒体だ。Bingが言っている内容には信憑性がある。
では、ということで次の質問。

問:クリスチャン・リンドナー氏はなぜ合成燃料/eFuelを唱導しているのか?また、誰が彼の仲間(allies)なのか?
答:クリスチャン・リンドナーは、合成燃料がドイツの自動車産業と雇用を維持しながら気候変動目標を達成するのに役立つと考え、合成燃料を提唱している。また、合成燃料は内燃機関を禁止するよりも現実的で公平であり、人々は既存の自動車を維持し、カーボンニュートラルな方法で使用することができると主張している。
彼の盟友には、ドイツの首相で社会民主党(SPD)党首のオラフ・ショルツも自動車部門を守る方法として合成燃料を支持しており、合成燃料の研究・生産に多額の投資をしているドイツの自動車メーカー、ポルシェもいる。
主な出典:
Germany’s finance minister pushes to save car engines from EU green plans
https://www.politico.eu/article/germany-finance-minister-christian-lindner-save-car-engines-eu-green-plan/
How the Greens duped Christian Lindner into killing ‘das Auto’
https://www.politico.eu/article/how-the-greens-duped-christian-lindner-into-killing-das-auto/

なんと、ショルツ ドイツ首相も合成燃料/eFuelの唱導者だった。また、ポルシェは多額の投資をしているという。
錦の御旗はドイツ自動車産業の雇用を守るため。これはこれで一理ある。Politicoを根拠にそれを言うBingは、なかなか事情がわかっていると思う。Politicoは欧州の政治状況を正確に報道するメディア。

チリで行われている大規模な合成燃料/eFuel製造プロジェクトHaru Oni(ハルオニ)

ポルシェはどんなことをやっているのだろうか?

問:ポルシェは何を調査しているのか?合成燃料の研究にいくら投資しているのか?
答:ポルシェは、ガソリンエンジンに使用できる合成燃料、別名eFuelの研究を行っている。ポルシェはチリのHaru Oni(ハルオニ)というプロジェクトに参加しており、風力発電を利用して水と二酸化炭素から合成燃料を製造している。
ポルシェは、合成燃料によって内燃機関の二酸化炭素排出量を最大90%削減できると主張している。
ポルシェはHaru Oniプロジェクトに2,000万ユーロを投資し、2022年までに13万リットル、2026年までに5億5,000万リットルの合成燃料を生産する予定です。また、ポルシェはモータースポーツ活動やクラシックカーの顧客向けに合成燃料を使用する意向。
主な出典:
eFuels to supplement electric mobility on the road to becoming CO2 neutral
https://media.porsche.com/mediakit/innovation-sustainability-performance/en/innovation-sustainability-performance/synthetic-fuels
Porsche researches synthetic fuels
https://newsroom.porsche.com/en/2020/company/porsche-research-synthetic-fuels-efuels-development-22026.html

Haru Oniプロジェクトでは、2026年までに5億5,000万リットルの合成燃料/eFuelを生産する予定とのこと。5億5,000万リットルがどのぐらいの規模なのだろうか?
日本では二人以上の世帯が1年間に消費するガソリンの量が発表されている。

都道府県別ガソリン消費量
https://todo-ran.com/t/kiji/23021

それによると、全国平均で1世帯当たり472リットルが消費されている。Haru Oniプロジェクトの5億5,000万リットルは約116万世帯分に当たる。非常にまとまった量だと言うことができる。かなり戦略的なプロジェクトなのだ。

プレリサーチではフォルクスワーゲンも合成燃料の研究に投資していることがわかった。実際はどうだろうか?

問:フォルクスワーゲンは同じテーマで研究をしているのか?
答:はい、フォルクスワーゲンも合成燃料の研究をしているのだが、ポルシェほど積極的ではない。
フォルクスワーゲンは、ポルシェ、シーメンス・エナジーとともに、チリにあるHaru Oniプロジェクトに参加しており、風力発電から合成燃料を製造している。
しかし、フォルクスワーゲンは、合成燃料はバッテリー技術に対抗するには高価で効率が悪いと考え、合成燃料よりも電気自動車に重点を置いている。フォルクスワーゲンは、水素と二酸化炭素から作る合成燃料であるエレクトロ燃料に関するフィンランドの研究プロジェクトにも参加している。
主な出典:
Siemens Energy and Porsche, with partners, advance climate-neutral e-fuel development
https://www.volkswagenag.com/en/news/2020/12/porsche_haru_oni.html
Brussels to Berlin: We’ll find a way to save the car engine
https://www.politico.eu/article/brussels-to-berlin-well-find-a-way-to-save-the-combustion-car-engine-emissions-synthetic-fuels/

と、このようにChatGPTでどんどん深掘りしていくことができる。

合成燃料/eFuelの主なプレイヤー

ChatGPTで色々な能力を引き出す手法を「プロンプトエンジニアリング」と呼んでいる。ここでは、意図的に単純な質問から始めて、どんどん深くしていく手法を取っている。これも立派なプロンプトエンジニアリング。ChatGPT(Bing)がかなりの理解のある専門家だとみなして、こちらは意図的に下手に出て、どんどん深掘りする。

このように質問を重ねていって、次のことが判明した。

・ポルシェ、フォルクスワーゲン、シーメンス・エネルギーはHaru Oniプロジェクトのパートナー。
・合成燃料の製造方法は主なもので3つあるが、ドイツ各社が取り組んでいるのは再生可能な電力を使って水を水素と酸素に分解し、水素と二酸化炭素を結合させて合成燃料を製造するPtL(Power to Liquid)プロセスと呼ばれるもの。
出典:
Power-to-Liquids, explained
https://www.airbus.com/en/newsroom/news/2021-07-power-to-liquids-explained

・合成燃料の中でも、水と二酸化炭素で作るタイプのものを欧州勢はeFuelと呼んでいる。原料が水と二酸化炭素なので、燃焼する時に二酸化炭素が出てもプラスマイナスゼロで、カーボンニュートラルだと主張している。

・欧州におけるeFuelの主な提唱者は以下。
 eFuelアライアンス:カーボンニュートラルな合成燃料の製造と利用を促進する企業や団体のネットワーク
 ドイツ政府:EU再生可能エネルギー指令の国内実施において、乗用車および小型商用車のCO2排出量削減の選択肢としてeFuelを含めることに合意
 EU:eFuelを運輸部門の脱炭素化に貢献できる持続可能な再生可能燃料と認定した
 ポルシェ:eFuelプロジェクトに投資し、2022年までに自社車両でeFuelをテストすることを計画
 エアバス・グループ:他社と提携して航空用eFuelの開発・実証を行っている

再生可能エネルギー発電のコストが極めて安い国が有望

eFuelの開発と革新に携わる科学者や研究センターは数多く存在する。そのひとつがチリの事業会社であるHighly Innovative Fuels(HIF)。ポルシェはこの会社に7,500万ドルを投資した。同社はeFuelの製造工場をチリ、米国、オーストラリアで建設する計画がある。
出典:
eFuels pilot plant in Chile officially opened
https://newsroom.porsche.com/en/2022/company/porsche-highly-innovative-fuels-hif-opening-efuels-pilot-plant-haru-oni-chile-synthetic-fuels-30732.html
HIF
https://hifglobal.com/

・HIFは、プンタアレナス(チリ)でHaru Oni(ハルオニ)パイロットプラントを運営しており、風力タービンによる再生可能エネルギーでグリーン水素を製造し、空気中から二酸化炭素を抽出し、フィッシャー・トロプシュ(Fischer–Tropsch)技術でeFuelに変換している。

・なぜチリなのか?マジェラン海峡に近いチリのパタゴニア地区は、世界でも最も風が強く吹く地域であり、低コストの風力発電が可能になる。平均で秒速9メートルの風が吹く。また、風力発電機の稼働率は50%と高い。

・世界で再生可能エネルギーが安い、合成燃料の生産に適した国としては、チリ以外に、ブラジル、インド、メキシコ、トルコ、米国がある。

ということで、最終的に合成燃料/eFuelの生産に最も重要な要素は、いかに安い再生可能エネルギーが得られる土地であるか?ということが判明した。

とすれば、風力や太陽光だけでなく、水力発電も有望ということになる。水力発電が安い国はどこか?筆者は中国とカナダだと理解している。そうした国でこれから合成燃料/eFuelが生産されることになるのかも知れない。

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