中国の自転車事情|シェアサイクルの次はサイクリングが流行か
中国では主な交通手段の選択肢にシェアサイクルがある。街にはシェアサイクルが溢れ、住民の生活の一部になっている。そして、現在新たなトレンドになりつつあるのが環境にやさしいサイクリングだ。本記事では、現地からお伝えする中国の自転車事情や流行中のサイクリング市場、今後の自転車マーケットの将来性について解説する。
中国の自転車事情|シェアサイクルの次はサイクリングが流行か
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年5月22日
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中国人の生活に欠かせないシェアサイクルとは
中国の都市部における主な交通手段はバイクや自転車、バス、地下鉄、タクシーなどがある。特に自転車は生活の一部となっており、余程狭い道でなければ自転車とバイクが走る専用のレーンが殆どの道路に設置されている。
中国はシェアサイクルの先進国で、アプリを利用して自転車を手軽にレンタルできるサービスがある。街の至る所にシェアサイクル用の自転車があって乗りたい時にすぐレンタルできる。返却先の指定もないため、好きな場所で乗り捨てることができる(一部返却禁止区域あり)。安価なことも特徴で、筆者がよく利用するサービスは、30分1.5元(約30円)。通勤や通学など利用回数が多い場合は月額サービスがお得で、乗り放題で月20元(約400円)もしない。レンタルから返却・決済まで、すべてスマホ1つで完結する。日本のシェアサイクルは30分あたり150円前後で、貸出・返却先が指定されていることと比較すると、コスパがよく利便性が高い中国らしいビジネスだ。
中国上海市でシェアサイクルといったら、青い自転車の哈啰出行(ハローバイク)、または黄色い自転車の美団(メイトゥアン)である。どちらも料金やサービスの違いはあまりないので、自宅や目的地など使いたい場所の周辺に多く置かれているメーカーを選択する傾向にある。
自転車シェアリングが浸透している中国では、昨今、サイクリング市場が伸びてきている。
中国のサイクリング市場
シェアサイクルの自転車ばかりで、個人が所有する自転車を街で殆ど見かけることがなかった時期があった。しかし、近年、コロナによる影響や運動不足解消のため、マイ自転車に乗る人が増え、関連商品の販売額も大幅に伸びてきているという。
中国自転車協会が2023年9月に発表したデータによると、国内の自転車保有台数は2億台を上回り、都市部の居住者が外出する際、100回のうち約30回が自転車での外出だったという。サイクリングがブームとなるのと同時に、自転車文化の普及により関連産業も急速に発展している。マウンテンバイクからロードバイク、折り畳み自転車、電動自転車まで、実にさまざまな種類の自転車が次々に登場。自転車用品も専門化・多様化がさらに進み、利用者に個性的で快適な選択肢を提供するようになった。自転車市場の規模は2027年までに2657億7千万元(1元=約21円)に拡大すると見込まれている。
(引用元:新華網日本語 https://jp.news.cn/20231122/dfbbf93eb1814b10bca8b31e3b8362c6/c.html)
上海市は緑が整備された道が多く、自然を感じながら散歩やサイクリングを楽しめるコースがいくつかある。週末の天気の良い日は、ジョギングコースとサイクリングコースに大勢の人々が集まり趣味を楽しんでいる様子が伺える。また、環境にやさしいことから自転車旅を好む中国人もいる。
中国、サイクリング商品の購入傾向
愛好者が所有する自転車の種類はロードバイクの割合が最も高く、8,000元〜30,000元(約16万円〜60万円)の自転車を購入する人が多い。乗車経験年数が長い愛好者ほど、高価格帯の自転車を好む傾向が強い。
Tmall Globalによると、2023年3月までの1年間に、自転車及び装備品、自転車ウェア、ヘルメット、サングラスなどの商品の売上高は前年比200%に倍増し、自転車関連商品の数も700%以上増加した。Tmall Globalでは、日本、イギリス、アメリカ、スイス、イタリアなどの20社以上の自転車メーカーやアクセサリーブランドの商品を販売しており、日本のShimano、イギリスのBrompton、アメリカのSpecialized、Trek、Oakleyなどが人気を集めている。
(引用元:アリババグループ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000098612.html)
また、中国メディアによると、女性のサイクリング愛好者の割合が年々増加しており、若者よりも40代以上の利用者が継続的に上昇している傾向であることが分かった。
中国における自転車市場は発展するのか
ここまで中国におけるシェアサイクルとサイクリングについて解説してきたが、今後も中国の自転車市場は発展するのか。
世界一のEV大国と言われている中国だが、電動アシスト自転車は比較的ニッチである。しかし、環境にやさしい水素で走る電動アシスト自転車が登場するなど、新技術を応用することができるため話題性がある。そして現在、中国ではガソリンエンジン車を規制していることや、2035年にガソリン車を全廃することから、免許が必要ない電動自転車は市民の交通手段として需要が伸びると予測される。また最近では子ども用自転車の人気も高く、中国の公園には中高級自転車を乗り回している子どもも少なくない。
自転車本体に限らず関連商品においても販売額が伸びていることから、自転車市場は様々な方面で将来性のあるマーケットとなるだろう。