最新:中国のファストフード市場と人気の中国式チェーン店
中国の外食文化といえば圧倒的に中華料理の店が多く消費者の需要も高いが、その次に人気があり店舗数が拡大しているとされるのがファストフードだ。2020年の新型コロナウィルスの影響で、市場は縮小したものの現在は回復し、感染症流行前の水準を上回るファストフード店もある。一方で、安全と健康に不安を覚える消費者も増加しているという。当記事では中国で人気の高い中国式ファストフードチェーン2つとその市場について紹介する。
中国のファストフード市場と人気の中国式チェーン店
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年7月15日
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人気の中国式ファストフードチェーン「大米先生」「老乡鸡」
中国でファストフード店といえばマクドナルドとKFCが圧倒的なシェアを誇っている。アメリカ発のSHAKE SHACKも人気で、店はいつも混雑している。上海市でロックダウンがあった際、筆者が住んでいる小区ではSHAKE SHACKの団体購入が立ち上がり即完売していた。中国のSNSでも度々投稿されていて、味だけでなくプレミアム感とおしゃれな見た目も人気が集まる理由だろう。
海外のファストフードチェーンに圧倒され気味だが、中国ブランドもチェーン規模を拡大しつつある。中国のファストフードチェーンといえば「真功夫」「大米先生」「乡村基」「老乡鸡」「老娘舅」などがあるが、当記事ではランチタイムにいつも混雑している、中国人おすすめの「大米先生」と「老乡鸡」について紹介する。
「大米先生」は2011年、重慶市に1号店をオープンさせて以来、着実に規模を拡大させてきた。現在、グループの合計店舗数は1,145店にまで成長。様々な料理が一食ずつ皿に盛られており、好きなおかずを取ってお盆にのせ、オリジナルの定食メニューを作ることができる。大米先生に限らず中国ではこのようなバイキング形式の店が多い。健康に良い栄養のあるメニューが豊富で、近年の健康志向ブームの波も捉えている。11時半前、ランチタイムには少し早い時間に筆者が訪れた際は、既に列ができている状態だった。他の飲食店は客がゼロという店もある中、大米先生だけ客入りがよかったのだ。ランチのピークタイムならほぼ全店で列ができているというから大米先生の人気の高さが伺える。
海外の調理工程と比べると、中国のファストフードは蒸す、炒める、煮込む、焼くなど比較的複雑で調理時間、味、品質、価格のバランスをとるために品質を妥協点と考える。しかし、大米先生は人件費と賃貸料や設備に投資をしている。品質の高い新鮮な食材を仕入れることにこだわりレストランのような品質をめざして消費者へ提供しているが、一人当たりの平均消費額は約25元と価格はファストフード並み。2020年の新型コロナウィルスの影響で売上が低迷したものの、2021年には感染症前の水準を上回るほどの回復を見せたと現地メディアは伝えた。
「老乡鸡」は2003年創業、安徽省発の中国ファストフードチェーン。こちらも大米先生と同じバイキングスタイルだが、価格は少し安く設定され白米が無料となっている(筆者調べ)。昼時はかなり混雑していて列に並ぶことは必須だ。
老乡鸡は2020年に全国展開を加速させ、店舗数を800から1000以上に増やし、月平均20店舗近くを新規オープンさせた。消費者数は累計6億人、1日50万人にものぼる。2021年に店舗売上は40億元を突破。売上高10億元を超えるのに12年、そこからわずか2年で売上高20億元を超え、2011年から2019年までで利益33倍、売上高32倍、年平均成長率は約40%だという
(引用:亿邦动力 https://m.ebrun.com/473866.html)
中国のSNSでは大米先生よりも老乡鸡の投稿数が多く、カロリーを気にする内容の投稿が多い印象だ。個人の好みとメニューによって味の善し悪しは分かれるが、老乡鸡のほうが評価は高い。老乡鸡は年商1000万元を超える店舗もあり、2023年末には全国で1500店舗近くまで拡大する予測で、将来的には中国ファストフード初の100億元ブランドとなる見込みだと現地メディアは伝えた。
中国のファストフード市場と浮き彫りになる衛生問題
2016年以降中国のファストフード市場規模は安定した成長の勢いを保ち、2016年の5648億元から2019年の7257億元まで成長した。2020年は新型コロナウィルスの影響を受け、全国のファストフード市場の発展は縮小したが、2021年には前年比17.27%増の7728億元と市場規模は回復した。
(引用:前瞻网 https://www.qianzhan.com/analyst/detail/220/220826-1e56e41f.html)
2021年、中国の消費者の35.2%が月に1~5回デリバリー注文をし、27%が月に6~10回、14.3%が月に11~20回、5%が月に20回以上デリバリー注文を利用するという。デリバリーをしないと答えた消費者は、わずか18.5%だった。2020年までに中国のオンラインデリバリー市場は6646億2000万人民元に達し、利用者は4億5600万人。デリバリー市場は2011年の全国食品飲料収入の1.06%から2020年には16.83%と順調に成長している。
デリバリー需要が高まる一方で、安全性には不安の声が上がっているという。
2021年11月1日現在、全国で開示された食品安全問題は4,071件に達し、2020年と比較して7.4%増加している。食品安全に関する問題の発生頻度が最も高かったのはファストフードで1,209件。これに続くのが飲料で469件、中国式正餐で425件であることが明らかになった。
(引用:新浪网 https://finance.sina.com.cn/tech/2022-03-09/doc-imcwipih7526791.shtml)
2020年に流行した新型コロナウィルスは中国の外食文化に変化をもたらし、デリバリー消費の供給を加速させた。店内にほとんど客がいなくても、デリバリー注文された商品が入っている袋でカウンターが埋め尽くされ、配達ドライバーが次々と入店するという光景は、中国なら見慣れた光景だろう。マクドナルドなどのファストフードであれば、ランチのピークタイムでも注文して30分以内で玄関に到着する。便利さと非接触のサービスは、中国に住んでいる人にはなくてはならないものとなっている。筆者もその内の一人で、よくオンラインデリバリー注文「ワイマイ」を利用する。店で食べるよりもかなり味が落ちていたり、当たり外れがある。ひどいときには味云々ではなく、某ファストフード店の商品を食べて食あたりのような症状でトイレから出られなくなったことがある。調理工程や使用している食材、調味料、店の衛生状況がまったく見えないため、料理がどのように作られ家まで配達されているのかわからない不安要素が消費者の間で膨らんでいるのだ。
中国のファストフードチェーン華菜士で撮影された厨房内の様子が問題となるニュースがあった。床に落ちた食材や、ハエがたかっている食べものなどをそのまま商品として販売するなど、想像を絶する衛生状態だったのだ。しかし、これは氷山の一角だと上海の飲食店で働いた経験のある友人はいっていた。
まとめ
健康と安全性に重点を置いている中国消費者が多い傾向にあり、自分で好きな料理を選べるバイキング形式のファストフードの人気が高い。健康・栄養バランスに注目したメニュー開発はできても、安全性については疑問が残るのが現状だ。今年、上海市政府が食品安全の検査を飲食店で実施したところ、有名ファストフードチェーン店などを含む合計15店舗で大腸菌などの不検出が挙げられた。日本の飲食店では最も基本となることだが、中国では食の安全性の標準化を図ることが大きな課題となっている。
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