少子化の中国で需要が高まる”月子中心(産後ケアセンター)” 市場
中国では「坐月子」という産後1ヶ月母体を回復させるための期間がある。その期間中、母親は授乳や食事以外は極力体を動かさず休養をとることが非常に大切と考えられており、赤ちゃんのお世話などは他者にお願いする。姑や実母、または月嫂(産後のお世話をしてくれるお手伝いさん)、「月子中心」と呼ばれる産後ケアセンターなどでお世話をしてもらう。当記事では中国における出産事情と今後発展が見込まれる月子中心について紹介する。
上海在住ライターが解説”月子中心坐月”市場
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年6月8日
月子中心坐月:産後、姑のストレスを回避したい90后の中国人ママ
中国では産後の体を回復させるための伝統的なしきたりがある。体を冷やしてはいけないので夏でもクーラー禁止、水に触ってはいけないので入浴や歯磨き禁止、目によくないスマホやテレビ禁止といったものだ。しきたりを厳格に守りながら産後を過ごすかどうかは地域や年代、個人の価値観によって変わってくるが、現代の今も姑世代はしきたりを大切にする人が多い。
筆者の周りにいる90年代の中国人ママは、しきたりを取り入れながらも時代にあった子育てをしたいと考える人が多く、昔の風習を過度に押し付けられたくないと感じている。「昔なら産後のお世話や子育てを姑にお願いするのが一般的だったが、余計なストレスと軋轢を回避するため月嫂(専門のお手伝いさん)を雇ったり月子中心(産後ケアセンター)に入ったりする人が多い。私も月子中心で産後1ヶ月を過ごした」と中国人の友人は言っていた。
友人が1ヶ月間利用した月子中心の費用は約53,000元(約1,007,000円)。利用者が中国人か外国人であるかで値段が2万元(約380,000円)も違うことや、母子同室か別室かでも金額にかなりの差が発生する場合もあるそうだ。また、早めに申し込みをすると割引が適用される施設もある。月子中心は看護師や医師など専門のスタッフが常駐しており、母子の健康管理だけでなく、バランスのとれた健康的な食事の提供や授乳指導などの育児サポート、母親の肉体的・精神的なケアもする。さらに、赤ちゃんの沐浴などのお世話全般や初期の知的発達の診察など一般家庭では難しいことも月子中心では可能になるため、初産の母親でも安心して産後を過ごすことができるのだ。産後の心身ともに大変な時に、昔の子育てを押し付けられることがなく快適に過ごせ、プロが手厚いケアをしてくれる月子中心が産後の避難所として人気になるのも納得がいく。
月子中心市場と日本製ベビー・マタニティ用品の需要
iiMedia Researchのデータによると、月子中心(産後ケアセンター)の市場規模は2013年の17億8000万元から2019年には179億8000万元に拡大し、年平均複合成長率は約47%で成長。2023年の市場規模は243億元、2025年には455億元に達すると予測している。
月子中心は大きく分けてホテル型・戸建て別荘型・病院付属型の3種類ある。現在、業界内の店舗数はホテル型が約40%、戸建て別荘型が約35%、病院付属型が約25%となっている。近年、中国ではブランドイメージやサービス品質などの優位性から、ホテル型の月子中心が人気を集めており市場規模も拡大しており、2019年のホテル型の月子中心の市場規模は74億8700万元に達している。2020年に新型コロナウィルスの影響で縮小したホテル型月月子中心の市場規模は、2021年には成長を再開し80億7500万元に達すると予測されている。
出産適齢期の女性の多くは経済的に安定し、自分のキャリアも持っているため、伝統的なしきたりを重視するより出産後すぐ仕事に復帰できることを望んでいる。また、iiMedia Researchが実施した「2021年月子中心市場ユーザー調査」の結果によると、月子中心で出産した女性の97.5%が、将来また出産した場合にも月子中心を選ぶと答えており、一定以上の経済力を持つ女性の需要が高いことがわかった。
しかし、それでも月子中心の普及率は5%程度で、主に北京、上海、深セン、広州などの経済発展都市に集中しているのが現状だ。台湾の普及率が60%であることと比較すると、中国における月子中心市場の発展余地は十分にある。
(引用:美国 https://www.sohu.com/a/472353029_533924 )
(引用:界面财经号 https://m.jiemian.com/article/6465238.html )
(出典:大众点评)
日本大手メーカーが販売しているおむつや、哺乳瓶のトップブランドとして名の知れたピジョンの哺乳瓶、日本発の世界ブランドとして人気の高級ベビー服ミキハウスなど、上海市にある月子中心では日本製のベビー・マタニティ用品が多く使われている。生まれたばかりのデリケートな赤ちゃんが使っても安心安全であることや、高性能な日本製品は中国でも高く評価されている。
まとめ
2021年5月31日に「三人っ子政策」が正式に実施されたことで、出生率低下の回復が期待されている。月子中心産業の需要は高まり、今後発展する可能性は非常に大きいだろう。しかし、この業界には統一された基準がないため悪徳企業も存在すると現地メディアは伝えている。業界の発展に伴い、一部の悪徳企業が排除され市場競争が激化すると予測される中、高品質で安全性の根拠を説明できる日本ブランドの需要が高まることを期待したい。