「畳が中国で売れる」は時代遅れ?中国人のリアルな反応と今後の見通しとは

中国

中国人が想像する日本の家具といえば、最も代表的なものは畳ではないだろうか。
日本の文化とも言える畳は日本での需要が減少しつつある。そのため、10年以上前から日本の畳を中国の富裕層へ販売しようと、中国市場へ参入する日本企業が現れた。畳や和室の内装が中国で注目を浴び始め、2016年頃から畳や和室など日本式の内装業者は増加し、人気を博している。
では、現在も畳は中国で需要があるのだろうか。畳に対する中国人のリアルな声と今後の畳市場についてご紹介する。

「畳が中国で売れる」は時代遅れ?中国人のリアルな反応と今後の見通しとは

   著者:上海gramフェロー米久 熊代
公開日:2022年3月25日

中国人が持つ畳のイメージ

「畳は中国で人気だと思う。ショールームでよく見かけるよ。畳があるだけで一気に格式高い空間になる」と中国人の知人が教えてくれた。一方で、中国のネット記事には「日本で人気のある畳を中国ではほとんど見かけることがない」と書かれており、なぜ中国で畳は人気がないのか理由が4つ挙げられている。

1 – 健康への影響
湿気を体内に取り込むと健康に害があると多くの人が考えている。中国では湿度の高い場所が多く、足の高いベッドを使うことで地面から遠ざかることができる。しかし、畳にすると身体が地面と近くなってしまうため、湿気や埃など体に害のあるものを吸い込み易くなってしまう。多くの中国人がこの懸念を抱いている。中国の家は日本と比べ建付けが悪く、筆者の家にも壁や床の間に隙間がかなりある。その隙間から埃などが入ってきてしまい、毎日の床掃除は欠かせない。さらに、PM2.5の問題もあり、1部屋に1台空気清浄機を設置しているほど家の中でも身体への影響を気にしている。一部の中国人が言う通り、たしかにベッドの代わりに畳のような床で寝ようとは思えない。

2 – 生活空間の問題
畳ならば、狭い部屋であっても一つの部屋を寝室や食卓、客を持て成す場所などとして有効に使うことができる。しかし、中国ではほとんどの人は家の構造的にプライベートスペース不足を心配する必要がないため、畳にする必要性を感じないのだ。

3 – 快適性の低さ
中国人からすると畳はとても堅く感じる。フカフカのベッドで寝ることがスタンダードの中国人にとって、畳は寝心地が悪い。

4 – 移動が不便
中国人が家に畳を作る際、寒さ対策のため上がり和室のような高さのある畳を敷くことがほとんどだ。しかし、上がり和室はベッドのように動かすことができないため不便に感じる。
(引用:百度 https://mbd.baidu.com/newspage/

畳の上で横になり休んでいる姿は、まるでアルバイトの仮設住宅を連想させると話す中国人もいた。畳に対してあまり良いイメージを持っていない中国人もいるが、果たして実際はどうなのか。
次に、中国における畳市場についてご紹介する。

2021年の畳市場と消費者層

2021年現在でも、北京、上海、広州などの都市では、生活の質を追求する一部の中国人消費者の和室の需要が高まっている。2014年には中国国内における和室の内装消費額は50億円に達し、そのうち畳が4分の1を占め、毎年10~15%のペースで増加している(引用:百度 https://m.chinairn.com/hyzx/20210212/153523343.html)。

多くの日本人は「清潔感」を好き好むが、中国人は清潔感よりも「豪華」を所望する。和室のような品格ある商品は一部の中国人消費者から支持されている。畳は格式高く、豪華さも演出できることからお金を惜しまない富裕層に需要があるのだ。

中国人富裕層が好みそうな畳

80年代、90年代の消費者層は家具製品に対する品質欲求がますます高くなっており、従来の型にはまったデザインでは若年層消費者の個性的なニーズを満たすことができなくなっている。しかし、家を作る際に畳を用いることで十分な個性を満たすことができるため、畳はますます多くの消費者に求められているのだ(引用:百度 https://m.chinairn.com/hyzx/20210212/153523343.shtml)。

また、「90後」(1990年代生まれ)と「Z世代」(1995年~2009年生まれ)は大きな消費層となってきており、今後の中国市場を引っ張っていきつつある。上海に住む90後の男性の知人は、「2000年ごろから中国はどんどん発展していき豊かになった。昔とはまったく変わった。僕たちの世代はいろいろな物に囲まれて育ったから、安さよりも品質重視で物を買うことが多い。親世代とは価値観が違う」と話してくれた。強い消費意欲を持つ90後とZ世代は、SNSやECでの口コミを参考にして品質の良い物を賢く買うのだ。

まとめ

畳に対して良いイメージを持っていない中国人も居る一方、中国では現在でも畳の人気が高い。畳は、独創的なニーズを持ち、質の良い商品を求めている若年層消費者の期待に沿うことが可能だ。日本企業は数年前は富裕層をターゲットとして中国の畳市場に参入したが、今後は中国市場を牽引する若い世代の消費者層にも目を向けることで、畳が品質の高い日本製品の市場を拡大する追い風になってくれるかもしれない。

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