中国で温水洗浄便座の生産量世界一になるも普及率が低い理由
数年前日本で中国人の爆買いが流行ったが、購入するさまざまな商品の中に「便座」があったことを記憶している人も多いのではないだろうか。
日本の温水洗浄便座は中国人の間で憧れになり、わざわざ日本まで買いに訪れる人も少なくなかった。日本の便座ブームが巻き起こり数年経った現在、その人気はどうなっているのか?
本記事では、ベールに隠された中国人のトイレ事情や現在のマーケット状況、今後の将来性について紹介する。
中国で温水洗浄便座の生産量世界一になるも普及率が低い理由
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年8月28日
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中国のトイレ事情
中国の公衆トイレには基本トイレットペーパーは用意されていないため持参が必須だ。そして、使用した紙は流すと詰まるため、トイレの横に設置されたごみ箱に捨てる。比較的新しいデパートなどの商業施設であれば、トイレットペーパーは置いてあるし流すこともできるが、ウォシュレット付きトイレを設置している公共施設はほとんどない。中国に数年住み、中国国内各地を旅行したが、ウォシュレット付きトイレを公共施設で見たのは後にも先にも上海市にある有名デパートの一か所だけという貴重な存在だ。
では住宅のトイレはどうだろうか。地域にもよるが、上海市にある住宅のトイレはトイレットペーパーを流すことができるが、日本のトイレットペーパーと比べて若干厚みがあったりトイレの水圧が弱く、詰まる頻度が高いと感じる。中国人の友人宅のトイレは洋式便座で、ウォシュレットと自動感知機能付きのスマート家電にしている家もあった。中国メーカーの他に日本の「TOTO」または「Panasonic」を設置している家も多いように見受けられた。
中国では家電のスマート化が進んでおり、家に入るときはカギは不要で指紋認証、料理をするとき換気扇のスイッチは手をかざすだけ、外出先から遠隔操作で掃除洗濯が可能など、ハイテク技術に囲まれている。日本では自動で蓋の開け閉めと水を流してくれるトイレはかなり前からあるが、中国でトイレのスマート化が一般的に普及し始めたのはここ最近で、特に若い世代に需要がある印象だ。
上海ディズニーランドで和式便座が多い理由
筆者が上海市にあるディズニーランドを訪れた際、疑問に思ったことはトイレである。日本であれば和式便座が設置されていたとしても洋式便座よりも数が少ないが、上海ディズニーランドのトイレは和式便座が多いように見受けられた。
中国のトイレは日本同様、洋式便座と和式便座がある。日本ほど洋式便座は普及しておらず、観光地はもちろん、デパートやディズニーランドのトイレでさえも和式便座を設置している所が多い。そして洋式便座より和式便座を好んで使う人が多い。
なぜ和式便座が中国人の間で好まれるのか。その理由は、「便座が汚いから座りたくない」という回答が筆者の友人の間では最多だった。
そのため中国人は便座に座らず、洋式便座の上に和式便座のように足を置いてトイレを使う人が多いらしい。たしかに、公衆トイレを使う際便座が汚れていることが多く、女子トイレなのにも関わらずなぜこんなにも飛び散ることがあるのか疑問だったが、友人の話を聞いて納得した。和式便座に慣れているため、自宅のトイレも本当は和式便座が良いと思う人も少なくないようだ。
生産量世界トップの生産力を誇る中国
中国家庭用電器(家電)協会の朱軍専任副理事長は「中国は現在、温水洗浄便座一体型便器の生産で世界トップだ。中国家用電器協会スマート衛浴電器専門委員会の統計によると、2022年の中国の温水洗浄便座一体型便器の年間生産量は1169万台、2023年も増加傾向は変わらず、総生産量は3年連続で1千万台を突破した。中国は温水洗浄便座一体型便器の生産量で、すでに世界の66%を占めている。主要な生産地は広東省仏山市、広東省潮州市、福建省厦門(アモイ)市/南安市、上海市及び江蘇省蘇州市・浙江省杭州市、浙江省台州市/衢州市などに集中している」と説明した。
(引用元:人民網 http://j.people.com.cn/n3/2024/0408/c94476-20154334.html)
中国における温水洗浄便座一体型便器の生産量はトップというニュースもあるが、一般普及率は低い。
2023年3月時点で、日本の温水洗浄便座の一般普及率は80.2%と非常に高く、約8割という普及率は数年前から変わらず、日本人の生活必需品となっている。一方で、中国においての温水洗浄便座普及率は2019年時点でわずか5%だったという。
日本の軟水と違い中国は硬水のため故障し易いこと、また日本ほど清潔さを保つことが難しい、価値観や使い方が違うことなどが一般的に普及しない理由として挙げられる。
まとめ
中国で温水洗浄便座を使うには水や衛生面での問題がある。また、かつては日本の温水洗浄便座に感動し、爆買いして中国へ帰ったという友人も、今は不景気の影響から国産ブランドの安い便座を選ぶと言っているほど、消費者の財布の紐は堅くなっている。
中国にある多くの日本ブランドは、中国産メーカーと差別化を図るため高品質・高性能を売りにしている。実際、日本メーカーTOTOの高級ブランド「ネオレスト」シリーズは中国の富裕層を中心に人気がある。インフラや清潔さの整備、ターゲット層の選定など問題はあるが、日本メーカーの認知度は高く、今後も日本の便座は中国で成長する可能性を大いに秘めているだろう。