バルト三国? 北欧? IT先進国 エストニアってどういう立ち位置?
一般的に、エストニアは陸続きの近隣二国、ラトビア・リトアニアと合わせてバルト三国の一国とされている。しかしながら、北欧諸国とも地理的に近く、文化を共有している一面もある。
そんなエストニアの立ち位置を様々な角度から紹介する。
バルト三国? 北欧? エストニアってどういう立ち位置?
著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2023年2月28日
エストニアの地理と気候
エストニアは東をロシア、南をラトビア、北は海を介してフィンランドと国境を持つ。ヨーロッパを東西に分けると東ヨーロッパに入るが、南北で分けた際は北に分類される。
デンマーク、スウェーデン南部とほぼ同値の緯度であるため、冬は長く暗く、当然雪が降る。真冬の日の出は9時以降で、日没も15時頃。日の出ている6時間が明るいかというとそうでもなく、大体の場合が曇りか雪のため、晴れている日は貴重である。
バルト三国としてのエストニア
日本では「バルト三国」と呼ばれるが、英語では「Baltic countries」や「Baltic states」(バルトの国々)と呼ばれる。Baltic statesという呼称は地理学的観点と歴史からつけられた名称である。第一次世界大戦後、ロシア帝国から独立した際に呼称されるようになったといわれており、当初はフィンランドもBaltic Statesの一員であった。
その後、ソ連の影響下にいなかったフィンランドがこのBaltic Statesが指す対象から消え、今の「バルト三国」が形成された。近年のロシアのウクライナ侵攻に対してバルト三国で協議をしたりと、20世紀に似た境遇を辿ったこの三国は様々な場面で協力している。
フィンランドとのつながり
北欧諸国とのつながりを語る上で欠かせない、エストニアとフィンランドの関係。
エストニアの公用語はエストニア語。そしてフィンランドの公用語の一つであるフィンランド語。この2つの言語は、欧州のほとんどの言語が所属する言語的グループ「印欧語族」とは違う、「ウラル語族」というものに属している。ヨーロッパのほとんどの言語は単語や文法こそ違えど起源は同じだが、エストニア語とフィンランド語はそれらとは異なる言語を起源に持つ。言語学的観点からすると、陸の孤島的存在なのだ。そのため、エストニア語とフィンランド語には似た単語が多く存在する。
例えば、数字の数え方。(1,2,3,4,5…)
エストニア語– üks, kaks, kolm, neli, viis
フィンランド語– yksi, kaksi, kolme, neljä, viisi
(引用元:Langfocus.com :How Similar Are Finnish and Estonian? (langfocus.com)
https://langfocus.com/language-features/how-similar-finnish-and-estonian/#:~:text=Finnish%20and%20Estonian%20generally%20share,some%20of%20its%20synthetic%20features.)
言語以外にも、どちらの国もサウナ文化を持っているという類似点がある。
また、海で隔たれた2国であるが、2国間はフェリーが毎日運航していて、乗船時間が2時間半という気軽さからフィンランドからエストニアに遊びに来る人も多い。エストニア統計局の報告によると、フィンランド人観光客はエストニアにおける外国人観光客に占める割合が最も高い。2022年3月の調査によるとエストニアを訪れた観光客のうち、最も多かったのはフィンランドからの観光客(約23,000人)だった。
このように、北欧の代表格であるフィンランドとのつながりが強いエストニア。北欧と分類されても遜色ないポテンシャルを十分持ち合わせている。
(引用元:Schengen Visa News: https://www.schengenvisainfo.com/news/number-of-foreign-tourists-in-estonia-increased-significantly-in-march/)
北欧諸国との文化的類似点
フィンランド以外の北欧諸国との文化的類似点も存在する。その一つが、Shrove Tuesdayと呼ばれる四旬節の前日に関するお菓子である。この祝日は他の国では「パンケーキ・デイ」と呼称されることもあり、クレープのような薄いパンケーキを食べる国もある。
しかしながら、北欧諸国で食べられるのはまた違ったお菓子。パンにクリームを挟んだシュークリームに似たお菓子を食べる。スウェーデン、フィンランド、デンマーク、ノルウェー、そしてエストニアでもこのお菓子を食べるのだ。
まとめ
エストニアは地理的、文化的、歴史的背景から、バルト三国としての一面と北欧としての一面を併せ持つ。国の地理的な利を活かして、北欧とバルト三国のビジネスをつなぐ役割を担うこともできるだろう。