Netflixで話題の「エミリー、パリへ行く」「 Lupin/ルパン」あなたはどっち派?

フランス

さすがダレン・スター。話題には事欠かさない。
「エミリー、パリへ行く」。フランスでは、ビバヒルやSATCが大好きな人たちには大絶賛を受けた一方、これは偏見だらけだと大炎上し、そしてその大炎上を大絶賛する人たちがいた。
不信感を抱く管理人、無愛想なパン屋やウエイター、傲慢で怠惰でナンパな同僚たち。これだけでもフランス人を怒らせる要素たっぷりだが、アメリカ人ヒロインは、メトロにも乗らなければ、窓からの視界がある広いメイドルームに住み、パリの石畳をピンヒールで歩き、カフェでは常に手にワイングラスを持ち、いつでもパチリとインスタ用の写真を撮り…やる事なす事のすべてがフランス人の現実とかけ離れており、コメディー・ドラマにしか見えないと、現地の声。では、エミリーが田舎町に行けば良かったのか?という事でもない。

「エミリー、パリへ行く」か「Lupin/ルパン」か?

 著者:gramフェロー 福本しのぶ  
公開日:2021年03月10日

国別概要情報 フランス(France)

「エミリー、パリへ行く」がフランスNetflixに登場

「エミリー、パリへ行く」がフランスNetflixに登場したのが昨年の10月2日。コロナ禍の中、旅行もできない、2度目の非常事態宣言前。10月末には冬時間になるフランスは、1日1日と日が短くなり、暗くなるもの早く、それでなくても感染症で心も蝕んでいく。だから楽しみはスクリーンの中だけだと、フランス人は新しいドラマに心躍らせ、2021年の「Lupin/ルパン」の登場で年明けは明るくなった。

さて「エミリー、パリへ行く」と「Lupin/ルパン」。
片方は偏見の連続で、片方は大胆なフランス・サクセスストーリーだ。
いろんな角度から見てみた。


パリは綺麗か?

両方。 どちらもパリの街並みは綺麗だ。かたやメトロにも乗らないピンヒールで歩く女子は、街角のドラム缶で焼いている焼き栗やトウモロコシの香りを経験することないし、夜のルーブル美術館で働いていたアサンは浮浪者とすれ違う事もない。非常事態宣言下か?と思うくらい、年中工事中の場所やクラクションの嵐になる渋滞のパリは見られない。

金持ちは人種差別人間だ

「Lupin/ルパン」。
偏見ばかりだと思われていた「エミリー、パリへ行く」を通り越して、「Lupin/ルパン」は二元論的に世の中を描いている。金持ちはみんな差別主義のろくでなしで、的はずれなことを言う。ただ、悪人は男性に限る。「Lupin/ルパン」では女性は良く描かれているので、便利なのは、性別、肌の色、社会的職業分類さえわかれば、誰が正しくて誰が間違っているのかがわかる。

主人公はマニアックだ

「Lupin/ルパン」。
エミリーは、興味あることはかなり限定されているとしても、ファッション、食、ショッピング、アメリカ人を呆れされるフランス式人間関係…とにかくパリを満喫している。それとは反対に、アサンが興味あるのは “アルセーヌ・ルパン”たったこれだけだ。息子へのプレゼントはルパンの本。誕生日にはルパンの帽子。家族旅行もアルセーヌ・ルパンの家へと。 お洒落で女たらし、紳士かつ怪盗で、ときには善良な人々を助けるヒーロー的存在のアサン、いや、彼こそがアルセーヌ・ルパンだ。

みんな主人公はクズだと思っているが、実は最強

両方。
「エミリー、パリへ行く」では毎回、エミリーの上司が彼女の提案を却下するが、何故か奇跡が起きてクライアントと接触でき、そこで、インスタに写真を投稿するといいね!の嵐。ツイートするとマクロン夫人からのリツイートでバズってイベントは大成功!だが翌日、会社に行って大喝采で迎えてくれるのかと思ええば、自分が座っている椅子よりもかろうじて高く評価されるのみで、すべてやり直し。
「Lupin/ルパン」はというと、怪盗のはずが元妻のポケットにさっとお金の束を入れ、アイデンティティーを変えては隠れヒーローになる。そして警察はと言えば、ヒーローを過小評価しているのではなく、存在を知っているにもかかわらず思い出す時間さえも作らないのだ。そして忘れてはいけないのは、善人が勝つためには、悪人は悪人以上に、そして善人は善人以下にならなければならない。

助演級の人はみな偏見だらけだ

両方。
エミリーではオンパレードだ。フランス男は変態で、フランス女はバカ女。もちろんその反対もあるが、それにしてもアメリカ女とすれ違うフランス人にはいつも目を疑う。第101空挺師団のモットー「運命とのランデブー」な感じにパリの街を歩いているのだ。
そしてルパン。繰り返しになるが、金持ちは意地悪で差別主義者だ。それだけではない。警察は愚かで差別主義者。唯一の自由主義ジャーナリストは、愛犬を「弾劾」と名付け、主人公の父親は、金持ちで馬鹿で意地悪な人の間で生きる、優しくて教養がある運転手で、それぞれが100%自分自身の役をパロディー化している。

主人公は自分の写真をネットに投稿しているが、しない方が良い。

両方。
エミリーは #眺めのいい部屋 とハッシュタグするも、自撮りで眺めなんてそっちのけ。
ルパンは、変装の王様のはずが、ウィキペディアに自分の写真を使ってページをつくるし。商品を売りたいのか、変装して盗みをしたいのか?

コロナ漬けになった2020年。
フランスでは厳しい外出禁止令が出た中、Netflixは国民にとっても憩いの場となった。批判も絶賛もしながら、2021年は、フランス製作作品も多く登場し、国民を癒してくれるに違いない。

さて、あなたはどっち派?

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