1月5日の夜に各家庭を訪れるロス・レイエス・デ・マゴスの正体は?

スペイン

 スペインのクリスマス休みはどんなに短くても1月6日までは続く。なぜなら1月5日の夜にロス・レイエス・デ・マゴス(Los Reyes de Magos)と呼ばれる3人組が各家庭を訪れるからだ。スペインでは通称レイエスと呼ばれるこの3人、毎年とても重要な役割を果たしているのである。

1月5日の夜に各家庭を訪れるロス・レイエス・デ・マゴスの正体は?

   著者:スペインgramフェロー 對馬 由佳理
公開日:2022年12月09日

毎年1月5日の夜に各家庭を訪れるロス・レイエス・デ・マゴスの正体は?

1月5日に開催されるパレードの山車には、子どもたちが乗ることも。

 新年を迎えたスペイン国内は華やかな雰囲気に満たされる。というのも毎年1月5日の夜、ロス・レイエス・デ・マゴス(通称レイエス)が各家庭を訪れるためである。このレイエスは子どもたちにプレゼントを持ってくるという、とても重要な役割がある。

 レイエスは日本語では「東方の三博士」と呼ばれている。聖書のマタイ伝によると、この3人は東の星に導かれ生まれたばかりのイエス・キリストに出会い、黄金・乳香・没薬を贈り物としてキリストに捧げたということになっている。スペインでは伝統的に「東方の三博士」は「プレゼントを持ってくる人」となっており、彼らが各家庭を訪れてプレゼントを置いていくのが毎年1月5日の夜なのである。

 1月5日の夜には、色とりどりのデコレーションを凝らした大きな山車に乗ったレイエスたちが、スペイン各地の市町村で「この街にもレイエスたちが到着しました!」とばかりに盛大なパレードをする。華やかなイルミネーションに彩られた大きな山車が町中を練り歩き、その山車の上にはレイエスたち座っている。山車から沿道の観客に向かってキャンディが投げられ、観客は我先にとそれを拾うのが1月5日のスペインのお約束である。

 子どもたちは1月5日このパレードを見てからベットに入り、翌6日の朝にレイエスからのプレゼントを発見するのだ。

 ちなみに、この「東方の3博士」はそれぞれメルチョール、ガスパール、バルタサール という名前がある。メルチョールは白人で白いひげをはやしている老人で、ヨーロッパ出身。ガスパールは3人の中で最も若いアジアの王様であり、バルタサール は褐色の肌をした中年のアフリカの王様ということになっている。

TV局も「レイエスは存在するのです」という前提でニュースを放送

 実際に子どもたちへのプレゼントを用意するのはレイエスではなく、各家庭のお父さんやお母さんをはじめとする大人たちである。そんな大人たちがデパートやおもちゃ屋に行って買い物をしている様子が、夜のニュース番組などで季節の風物詩として放送されることがある。しかし、そんな時でもTVキャスターたちは「レイエスは実在する」という前提で、子どもたちの夢を壊すことがないような形で放送するのも、スペインのお約束である。

 例えば、大人がおもちゃを買っている映像のナレーションは「レイエスから直々の依頼を受けた各家庭のお父さんやお母さんが、おもちゃを選んでいます」というものになる。

 新型コロナウイルスによる行動制限が厳しかった頃には、テレビ等で「スペイン保健省は、レイエスたちが新型コロナウイルスのワクチンを正しく接触していることを確認しました。これにより、レイエスたちがスペイン各地を全く問題なく訪れることができます。」というニュースがとても真面目な調子で報道された。

サンタクロースとの棲み分けは?

 ここで気になるのが、12月24日に各家庭を訪れるサンタクロースとレイエスとの棲み分けである。もちろん、スペインの子どもたちにもサンタクロースはやってくる。しかし棲み分けの方法については、各家庭の方針によってそれぞれ異なる、というのが実情である。

 例えば、12月24日はお父さん方の家族がプレゼントを用意し、1月5日はお母さん方の家族がプレゼントを用意するという「役割分担制」を採用している家庭もある。また、12月24日は子供にお小遣いをあげて、1月5日は「モノ」のプレゼントという家庭もあったりする。何らかの形で12月24日と1月5日の両方をお祝いするのが、スペインの家庭では一般的である。

 毎年華やかなパレードが繰り広げられる1月5日の夜。スペイン人のお父さんやお母さんは、1月6日の朝にプレゼントを前にした子どもたちの笑顔を見るために、日々頑張っている。

 スペイン人にとって、幸せな子供時代の思い出の象徴が、ロス・レイエス・デ・マゴスの3人なのかもしれない。

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