火付け役はアニメとK-Popアイドル?日本関連食材の人気は衰え知らず
今では世界中で人気のK-Popだが、ヨーロッパでその人気に火が付いたのは2017年から2018年にかけてのことだった。現在でもK-Popは人気が高く、パフォーマンスの秀逸さや、飾らない生活ぶりがYouTubeで配信されるようになり、等身大のアイドルとしてドイツをはじめオランダ、フランス、ポーランド、イギリス等で特に根強い人気を誇る。
そんなK-Popのアイドルが来日し、限定販売のカップラーメンを食べて絶賛する様子を動画で配信すると、ファンたちはすぐに反応する。アイドルが食べていた商品への興味が高まりSNSで拡散されていく。
火付け役はアニメとK-Popアイドル?日本関連食材の人気は衰え知らず
著者:オランダ在住ライター 稲葉 かおる
公開日:2022年2月2日
引き金は…
これまで、さまざまなグループがヨーロッパでコンサートを開催してきた。以来、K-Popのみならず韓国という国自体に興味を持った人が増えてゆく。特筆すべきは、これらファンの中には、もともとの日本のアニメ好きが多く含まれていたことだろう。サブカルチャー系のイベントが開催されれば、コスプレで盛り上がりもする彼らは、K-PopファンらとSNSでつながるようになる。そして、韓国の隣にある日本のサブカルチャーを間接的に紹介することになるわけだ。特に、ハローキティやリラックマなどのキャラクターに代表される「カワイイ」文化は、K-Popファンたちの興味を大いにそそる存在となったようだ。
K-Popアイドルたちが最初に遠征する外国といえば、日本だろう。ステージ上で上手に日本語を操るアイドルも多い。韓国語に加えて日本語バージョンのCDや動画がリリースされると、おのずと日本語や文化に興味を示すようになるファンが増える、という図式である。例えばK-Popのアイドルが来日し、限定販売のカップラーメンを食べて絶賛したとする。この様子が動画で配信されると、ファンたちはすぐに反応するのだ。「アイドルの某が食べていたあの商品、あれってどんな味がするんだろう?」「ヨーロッパでも買えるの?」そして、「食べてみたい!」という切望の声がSNSでシェアされ続ける。
人気商品を先取り
こうした生の情報を敏感にキャッチし、人気が出そうなアジア系商品を絶対に見逃さない輸入業者たちは、ニーズに合わせた商品を徹底的に吟味する。そして、一般消費者にとってもロングセラーになりうる商品を厳選して輸入し、アジア系食材を取り扱うスーパーマーケットの店頭で販売するのだ。
中でも、輸入が追いつかないほど人気が出た商品もある。薄い餅に包まれた丸い小ぶりのアイスクリームだ。こちらは、アジア系スーパーマーケットでなら冷凍の輸入商品がほそぼそと入手できたものの、あまりの美味しさから一般消費者からの輸入要望も多かったようで、その評判を耳にした食品会社が大量に輸入し、今ではごく普通のスーパーマーケットでも購入できるようになった。ちなみに、このアイス人気が広まった一因は、人気K-Popアイドルたちの好きなスイーツだったからだそうである。
自宅で寿司もラーメンも
約5年前は、日本の食材、たとえば日本米や海苔などは、中華系のスーパーマーケットで購入するのが当たり前だった。ところが現在は、ごく普通のスーパーで買いそろえることができ、自宅で簡単に寿司が作れるようになった。数年前まではコアなファンしか知らなかった日本の食材が、手軽に購入できるようになったのである。
たとえばラーメンは既に「日本のヌードルスープ」として、寿司同様に誰もが知る日本の味となっているが、自前ラーメンを作るための特選麺や凝縮スープも販売されているので、プロ級とはいかなくとも結構美味しい味が楽しめる。
WAGYUも静かなブームに
フュージョン(融合)料理を受け入れる土壌があるフランス、オランダなどの国では、日本食を元来のヨーロッパ料理に加えてアレンジしたメニューが非常に好評だという。たとえば、ピリッとした辛さを出すために、チリを使わず日本わさびを加える、といった細かい部分でも、日本食材は素材の味の引き立て役として大いに使用されている。
ヨーロッパの高級レストランと一般に呼ばれている店では、サーロインやテンダーロインなどステーキを出すのが定番といった印象があるが、ここ2、3年の間でWAGYUを提供するところも増えてきている。これらのWAGYU肉はオーストラリアから冷凍輸入されている他、各国の指定農家で日本と同様に育てられた欧州産のWAGYUである。
まとめ
ヨーロッパは地続きで、国境付近であれば隣国まで徒歩でいける気軽さだ。しかし、独自の文化・言語を誇り、隣国との違いを強調するがために自国称賛に徹する傾向もある。食文化とてしかりだ。自分たちの食生活を守り、変化をあまり好まない。ただ、彼らとて毎日同じ食材や味だけでは飽きることもあろう。ここ10年の傾向として、異文化が自分たちの文化を侵さない限りそれを甘受する傾向があるが、特に食文化に関しては日本食は大いに受け入れられている。寿司、和菓子などのスイーツ、味噌、WAGYUと、日本の食材や料理はK-Popやアニメに端を発した一種のブームとなって以来、現在もしっかりとヨーロッパに根付いているといっていいだろう。