スペイン流ライフスタイル|5食とシエスタがもたらすワーク・ライフ・バランスの秘訣

スペイン

1日はみんなが同じ24時間なのに、スペインに住んでいるとなぜかゆったりと時間が流れているように感じる。その理由の大きな一因は、1日5回の食事と今も残るシエスタ文化ではないだろうか。本記事では、スペインの人々の興味深い食生活や、1日をどのような時間配分で過ごしているのかについてお伝えする。

1日5食!?スペインの1日の時間割

   著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2024年4月2日

興味深い食生活、1日5食の内容とは

スペインでは、1日5食を摂ることが一般的だといわれている。

まず1回目の食事、
Desayuno(デスアユーノ)‐朝食
典型的な朝食はcafé con leche(エスプレッソにミルクを入れたもの)にクロワッサン、マフィンやトーストなどで、軽めに済ませることが多い。

ニンニクの風味でカリッと焼いたトーストに、すりおろしたトマトとオリーブオイル、塩などを混ぜたものを塗って食べる、Pan con tomateが有名だ。

そして2回目の食事、
Almuerzo (アルムエルソ) ‐軽食
アルムエルソはだいたい 午前10時からとる食事。ランチタイムが午後2時頃と遅いため、午前中に軽食をとる習慣がある。ピーナッツやオリーブをつまみながらの冷たい飲み物(ビールやワインを飲んでいる人も多い)、生ハムとチーズなど、バゲットに色々なものを挟んだ「ボカディージョ」と呼ばれるスペイン版バゲットサンドを食べることが多い。

3回目の食事が1日のメインの食事、
Comida(コミダ)‐昼食

前述したように、だいたい午後2時にスタートする。レストランでのランチの予約も2時~3時以降からしか出来ない事がほとんどである。そして、1日の中で最もボリュームがある食事がこの「コミダ」だ。場所や内容にもよるが一般的なレストランでは10ユーロ前後で「menú del día」という前菜・メイン・デザート・お酒も含む飲み物・食後のコーヒーというコースが用意されている。筆者の住むバレンシア発祥といわれているPaella(パエリア)も、この「コミダ」の時間にメイン料理として食べられる。

昼休みが長い学校や職場では食事のために一度帰宅することもあり、スペイン人にとって昼食は家族と一緒にゆっくり楽しむ時間でもある。


4回目の食事(夕食1回目)
Merienda(メリンダ)‐夕方のおやつ
メリンダには、甘い物やビール、ワインなどのお酒とタパスを楽しむのが一般的。

5回目の食事(夕食2回目)
Cena(セナ)‐夕食
夕食は平均して午後9時頃スタート。昼にしっかり食べる代わりに夕食は軽めという人も多く、サラダや腸詰類、作り置きのスペイン風オムレツなどが人気で火を使わない料理も多いようだ。

5食に昼寝付き?!日本人より長い平均睡眠時間

これだけ食事の回数も多く夕飯も夜9時からとなると、スペイン人は睡眠時間が相当短いのでは?と思ってしまうのだが、OECDの2021年の調査によると、驚くべきことにスペイン人の平均睡眠時間(約8.6時間)は日本人の平均睡眠時間(約7.2時間)よりも1時間以上長い。(ちなみにこの調査で日本人の平均睡眠時間の長さは世界最下位だった。)

その理由は、シエスタ(昼寝)文化が今も残っていることとも関係があるようだ。

スペインは特に午後の暑さが厳しい国であり、シエスタは元々農夫たちが暑さを避けるために始めた習慣だった。昼寝をして疲れをとった後はまた仕事に戻り、遅い時間まで働くことで、結果的に休憩せずに働き続けるよりも長い時間働くことができたのだ。

また、 商店や一般的な職場(企業や官公庁など)は、かつて週72時間、日曜営業は年間で8日のみという法律で営業時間が制限されていた。そのため、店側は最も効率よく客を獲得できる時間に営業する必要がある。多くの商店は暑さによって人が屋外での活動を避ける時間帯には店を閉め、涼しくなる夕方から開店して遅くまで営業するという方法を選んだ。結果的に店を閉めている間は今まで通りのシエスタ時間が残っていた。

夕飯を午後9からとるスペイン人は、世界的に見てもトップレベルで遅くに就寝する人々だと言われていて、夜の睡眠不足を補うためにシエスタをとるという意見もある。

実際のところ、特に都市部では忙しいビジネスマンがゆっくり昼寝をしている暇などなく、国民の60%がシエスタの時間に睡眠をとっていないと答えているアンケートもあることから、現在ではランチをとったり、用事を済ませたり、ソファでうとうとするレベルの休憩の時間に充てる時間となっている人が多いようだ。

14:00-17:00には要注意

前述のとおり、スペインではシエスタが一般的な習慣として今も残っている。シエスタは午後にお店や事務所が一時的に閉まる時間帯を指し、地域によっても異なるが午後2時から午後5時に多くのお店が閉まる。特に週末はもっと遅いこともあるので注意が必要だ。

デパートや大規模なショップはシエスタをとらないことが多い。地元の小さなお店や個人経営の商店などはシエスタで一時的に閉まることが多く、筆者の近所もこの時間帯はシャッターが降りている店がほとんどで、うっかりこの時間にお店に行くと午後5時以降に出直すことになる。

まとめ

スペイン人の1日は、5回の食事に午後のシエスタと、日本とはまったく異なる独特のリズムで流れている。それにはスペインの気候や伝統、人々の気質など様々な理由があるようだ。

スペインを訪れる際には食事時間やシエスタの時間を理解して、スペイン人のリズムに合わせて過ごしてみることをおすすめする。

【参考】
◇Do Spanish people eat 5 times a day? – Travel FAQ (2024 Edition):
https://www.ncesc.com/do-spanish-people-eat-5-times-a-day

◇The Spanish ‘menú del día’ and how to eat cheap in Spain:
https://fascinatingspain.com/gastronomy/menus/spanish-menu-del-dia/

◇Do They Really Take Siestas In Spain?:
https://www.babbel.com/en/magazine/do-they-really-take-siestas-in-spain

◇OECD日本政府代表部:
https://www.oecd.emb-japan.go.jp/itpr_ja/11_000001_00099.html

◇Everything to Know about the Spanish Siesta | Expatriant:
https://expatriant.com/everything-to-know-about-the-spanish-siesta/?utm_content=cmp-true

北田ミヤ

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スペイン在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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