中国で高級路線の時代は終わり?!コスパ重視の傾向高まる
数年前まで高級路線を走っていた中国の消費者は、今はコスパを重視する傾向にある。欲しい物を買う前には品質や使うシーン、評価、価格を総合的に検討した上で購入する合理主義なZ世代が増加している。若者の間で花柄の綿入れファッションが一時的に流行しているが、その際に「〇〇を買うお金がないのではなく、〇〇のほうがコスパが良いから」という言葉が話題になった。もはや「日本ブランド」というだけではビジネスを拡大することは難しくなってきた現在の中国について紹介する。
中国で高級路線の時代は終わり?!コスパ重視の傾向高まる
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年4月1日
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中国で高級路線を走っていた人気ブランドの失速と方向転換
国潮デザインで人気を博した中国の高級コスメブランド「花西子」のアイブロー79元事件は記憶に新しい。中国で誰もが知る有名インフルエンサー李佳氏が、ライブコマース中に視聴者から「高すぎる」と言われたのに対する「どこが高いの?」などの発言で炎上した。その後、李佳氏と花西子側が謝罪したが、批判的な反応が多く売上が下がった。
今回、炎上のきっかけとなった花西子のアイブロウは79元(約1,580円)に対し、淘宝(タオバオ)で売れ筋のアイブロウは10元前後の商品が多い。評価が20万以上付いている13元(約260円)の人気アイブロウを実際に使ってみたが、値段の割に描きやすく消えにくい品質に驚いた。中国では若者の就職難と失業者の増加が社会問題となっている背景からも、コスパを重視する若者が増加するのも納得がいく。
アイスクリーム界のエルメスの異名を持ち、火で炙っても溶けないアイスとして騒がせた中国の高級アイスブランド「鐘薛高」。1つ66元(約1,320円)の超高級アイスを販売したことで一時話題になった。現在はコスパを支持する消費傾向の波には抗えず、高級アイスクリームに対する消費者の熱は落ち着いている。そこで鐘薛高は、打開策として低価格の新しいアイスブランド「Sa‘Saa」を発表した。中国でアイスは2~5元(約40円~100円)で購入できるのに対し、「Sa‘Saa」の価格は3.5元(約70円)。中国のSNSでは「適切な価格」などの書き込みがあった。
節約志向が高まる中国でディスカウントショップが店舗拡大
中国でコスパと聞いたらどの店を思い浮かべるだろうか。中国に住んでいるなら知らない人はいない有名店「好特卖 HotMax(ホットマックス)」は、コスパの代表店と言えるだろう。
中国では数年前から、形などは不揃いだが味は問題なく美味しい「訳アリ商品」や、賞味期限間近だが低価格で購入できる「おつとめ品」の消費が注目されてきた。そして近年、おつとめ品業界のトップを走っているのがホットマックスだ。
ホットマックスは2020年2月に設立。賞味期限や使用期限が近くなった在庫をブランドから買い取り、消費者に格安で販売している。上海、北京、南京を含む10都市以上にシェアを拡大、現在は250店舗以上を展開している。また、30,000以上の商品を管理し、1,000以上のブランドと提携。商品は、スナック菓子などの食品類、日用品や玩具、ペット用品等。大型店の「mega 好特卖」では服や靴、鞄、スポーツ用品などのアパレルも取り扱っている。中国では「おつとめ品経済」が注目を浴び、今後さらに成長する見込みだという。
中国では消費期限が近づいた食品は「臨期食品」と言い、これを販売するビジネスは「臨期経済」=「おつとめ品経済」と呼ばれています。その市場規模は2年後には日本円でおよそ1兆円に達する見通しです。
(引用元:Yahooニュース https://x.gd/vBAak)
ホットマックスの店内は、平日休日、天候関係なく客が来ており、一定数の顧客を獲得しているように見受けられる。上海とハルビン出身の30代の友人は、「特に子ども用のおやつを購入することが多い。中国メーカーの定番おやつだけではなく、日本や韓国の高いおやつも安く手に入るから何度も利用している。あとは、日本の日焼け止めや顔パックも安く買えることがある」と教えてくれた。ホットマックスはその日によって店に並んでいる商品が違うので、思わぬ掘り出し物に出会えることがある。安さが最大の売りだが、店舗に足を運んでみないと何があるか分からないちょっとしたサプライズ感も顧客の心を掴んでいる。
高価格帯の商品はオワコンなのか 出店ペースを上げるスターバックス
中国上海市の街を実際に歩いてみて感じたのは、やはりコスパを感じられる店には活気があった。例えば、日本の庶民の味方サイゼリヤは中国でも低価格で食事を楽しめて、人の流れもある。また、ユニクロや会員制スーパーのサムズ・クラブ(Sam’s Club)、中古ブランドショップなどコスパが良い所には活気があるように感じた。
逆に日本の高級スーパー、ヴィトンなど高級ブランド店を取り扱う商業施設は客入りが悪いように見受けられる。しかし、消費者がコスパを支持する傾向にある中、商品の価格に関係なくカフェ業界はどの店にも活気があった。
現在、スターバックスは地方都市への出店を加速させている。徒歩3分圏内にスターバックス、ラッキンコーヒー、マナーコーヒー、Mスタンド、ティムホートンズなどのカフェが立ち並ぶ激戦エリアにも関わらず、単価の一番高いスターバックスは週末は満席だ。店舗の規模やデリバリー状況などは把握できないので見ただけでその店が繁盛しているのか判断するのは難しいが、東洋経済によるとスターバックスの売上高は増加し、出店ペースも加速しているという。
同社が1月31日に発表した2023年10〜12月期の決算報告書によると、同四半期の中国での売上高は7億3500万ドル(約1084億円)と前年同期比18%増加した。
スターバックスにとって、中国はアメリカに次ぐ世界第2の市場だ。2023年末時点の中国の店舗数は6975店。そのうち885店は2023年に新規開設したもので、2021〜2022年に比べて出店ペースが加速している。
(引用元:東洋経済 https://toyokeizai.net/articles/-/733513)
しかし、スターバックスの平均単価は9%減少したとも記載されていた。不景気なニュースが相次ぎ先行き不安な中、消費者の倹約傾向が高まっているのは事実のようだ。
先行き不安から宝くじの販売額増加
2023年は将来の経済不安から一攫千金の夢を見て宝くじを買う人が増加した。
宝くじの販売額は前年比53%増の5,700憶元(約12兆1,736億円)超えとなった。
(引用元:JETRO https://www.jetro.go.jp/biznews/2024/02/3b4494ab74ab9879.html)
宝くじを購入する層の多くは若者だ。自己投資のためだけでなくプレゼントとして宝くじを購入するなど、宝くじの新しいスタイルを確立した。
中国西安市では近年の結婚・出産率の低下を受け、結婚祝いとして宝くじをプレゼントするユニークなキャンペーンを実施している。
先行き不安から消費者の財布の紐が堅い状況はしばらく続く見通しで、Z世代に広がる理性的な購入が及ぼす影響に今後も注目したい。