マレーシア  民主主義指数ランクで40位に

マレーシア

英誌エコノミストが先日発表した「2023年の世界の民主主義指数ランキング」で、マレーシアは40位でした。

日本や、他の東南アジア諸国と比べると、どうなのでしょうか?

今回の記事では、この報道を中心にマレーシアの民主主義のついて詳しく説明します。

マレーシア  民主主義指数ランクで40位に  

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年3月28日

ASEANで最高位

調査対象となる世界の167カ国・地域中でマレーシアの順位は前年と同じ40位でした。東南アジア諸国連合(ASEAN)の中では最高位で、指数は10点満点で7.29でした。

他のASEAN諸国はフィリピン(6.66)、インドネシア(6.53)、タイ(6.35)などで、シンガポールは6.18でした。

1位はノルウェーの9.81で、日本は8.40で16位でした。

民主主義指数とは?

「民主主義指数」とは、エコノミスト誌の調査部門が60に上る指標を5つのカテゴリーに分類してスコアを集計し、その平均値でランク付けして公表しています。

評価で用いたカテゴリーは

   ・選挙プロセスと多元主義
 ・政府の機能度
 ・政治参加
 ・政治文化
 ・市民の自由

の5つの項目です。

マレーシアは7.29

マレーシアの指数は前年の7.30から0.01ポイント低下しています。

カテゴリー別の指数では「選挙の過程と多元主義」が9.58と最も高く、隣国のシンガポールよりも優れた指数です。

他のカテゴリーでは「政府の機能」が7.50、「政治参加」は7.22、「政治文化」は6.25で、「市民の自由」が5.88と低くなっています。

1957年の独立以来、マレーシアでは歴史的な初の政権交代が、民主的な選挙のもと2018年に行われ、自由で公正な選挙が実施されていると評価されています。

「欠陥のある民主主義国」

エコノミスト誌の調査部門ではスコアが8以上の国を「完全な民主主義」とし、24ヶ国だけでした。

スコアが7.99から5.99の間の国を「欠陥のある民主主義」と認定していて、マレーシアを含む50ヶ国がリストアップされています。

スコアが5.99から3.96の国は「ハイブリッド体制」と呼ばれる「権威主義的」と「民主主義」が両立している政府で、 34ヶ国がリストアップされています。

マレーシアは前回の選挙で改革派とされるアンワル現首相を選出していますが、まだまだ市民の自由を制限する多くの法律が依然として施行されています。人権団体は政府に対し、これらの法律の廃止などを含む選挙中に約束された民主的な改革を、速やかに実現するように求めています。

マレーシアの政治変化

マレーシアの政治体制は民主主義と権威主義の中間のグレーゾーンの体制、あるいは権威主義体制に近いと、長い間世界的に認識されてきました。

2018年の政権交代までは、独立以降一貫して特定の政党が政権を担っていました。

ただ、複数政党が参加して、民主的に、競争的な選挙が定期的には実施されていました。

一方で、選挙の公平性や、言論や表現・集会の自由など、市民の自由のに関しては疑問符がつく体制が長期にわたり続いてきたと考えられていました。

長年政権を維持してきたBN(国民戦線)が作り上げた権威主義体制はなくなりつつあり、漸進的に改革が進んでいると捉えられています。

民主化の行方が流動的

BNによる独占的な統治体制が2018年に崩壊して以降、政党や政治体制が混乱して不安定さを増し、民主化の行方も流動化しているのがマレーシアの現状です。

近年、アジア地域で民主主義指数が後退しているのは、一部の政府が言論や報道の自由に対する制限を国家安全保障上の理由で正当化していて、市民の自由の侵害が広がっているためと見られています。

民主主義に関する世界的な指標もEIU指数が公表されて以来、最低値を記録しています。

いま、民主主義が権威主義の拡大に脅かされ始めていて、多くの危機が発生していると考えられています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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