マレーシアの洪水対策に東京都が技術職員を派遣
以前、マレーシアの2021年の洪水について記事(自然災害に対する脆弱さが露呈:マレーシアの洪水について課題 )を書きました。
大変な被害が生じましたが、このほど、7月5~6日にかけて東京都が技術職員を派遣し、マレーシアの現地当局と現場の視察や意見交換を行ったとの報道がありました。
今後、洪水対策のほか、上下水道の整備といった都市インフラ技術において相互協力するとのことです。
そこで今回の記事では、マレーシアの2021年の洪水の続報として、東京都との連携について解説します。
「自然災害に対する脆弱さが露呈:マレーシアの洪水について課題」の続報
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2022年8月23日
2021年の洪水と今年の鉄砲水
2021年後半から2022年初頭にマレーシアで発生した壊滅的な洪水は、一時は7万人以上が避難をし、54人死亡、2人不明で、61億リンギット(約1,900億円)超の損害をもたらしました。これはマレーシアの国内総生産(GDP)の0.4%に相当します。
その後、今年の3月と5月にも首都クアラルンプール(KL)では大規模な鉄砲水と冠水が発生し、被害を生じており、水害対策が喫緊の課題になっています。
KLの「洪水対策行動計画2022」
クアラルンプール市役所(DBKL)は6月9日に、KLの水害に暫定的に対処するため、約1,000万リンギット(約3.1億円)を投じ、14項目から成る「洪水対策行動計画2022」を実施することを発表しました。
KL市内の洪水多発地点25カ所における排水路の整備や排水ポンプの新設、また道路の冠水発生時には、DBKLアプリから特定の道路を避けるように通知し、アプリをインストールしていない人に対してもSMSでアラートを出すようにするなどの対策で、今後3カ月で成果が出る見込み。
また、KLの全排水システムおよび洪水が頻発する原因を調査するため、コンサルタントチームを任命し1年掛けて調査を実施するとしています。
東京都と都市インフラ技術の知見共有
KL中心部では、今年に入り鉄砲水による冠水被害が相次ぎましたが、これは人口密集地で起きやすい「都市型水害」と呼ばれるもので、近年の気候変動や急速な都市化が原因とみられます。
今年5月に連邦直轄区相とKL市長が、洪水対策の参考として東京都の環状7号線地下調節池を視察しました。
過去に同様の水害に悩まされてきた東京都は、今回、東京都の技術職員12人をKLに派遣。首都近郊のバトゥダムや首都中心部の排水路を兼ねた地下有料道路「SMARTトンネル」や建設中の雨水貯留施設を視察しました。
SMARTトンネルは2007年に開通したKL郊外のスンガイベシ地区と市中心部を結ぶ9.7キロのトンネルで、豪雨で川が氾濫しそうな場合に道路を封鎖して、排水路とすることができます。こうした機能を持つトンネルは世界的にも珍しいが、完成から15年を経た同トンネルは比較的新しいものの、「トンネルのような構造物はいったん老朽化すると更新が難しい。施設の老朽化は各国で大都市が抱える共通の課題になっている」との共通の認識を示しました。
派遣職員は現地当局と現意見交換を行い、今後、洪水対策のほか上下水道の整備といった都市インフラ技術において相互協力することを決定しました。
都市型洪水は共通の課題
人口密集地特有の「都市型水害」は、地表がアスファルトやコンクリートで覆われた都市部では雨水が地下に浸透しないため、人工的に作られた下水管や雨水管に処理能力を超えた水が流れ込み、排水用の河川が氾濫して起こります。
KLでも、近年の気候変動による降水量の増加に加え、急速に都市化が進んだことでこうした水害が起きやすくなったと考えられています。
近年東京や日本の他の都市でも短時間の集中的な降雨が増え「都市型水害」は頻発しており、「都市型水害」は世界の各都市の共通の課題になっています。
各国で対策が急がれ実施されていますが、個人でも、各人が自治体が作成したハザードマップを確認したりアプリなどの緊急通報を確認するなどの心構えや対策が必要です。