マレーシア:MM2Hビザの申請条件厳格化、日本人に影響大?

マレーシア

マレーシアの長期滞在ビザ「MM2H(マレーシア・マイ・セカンド・ホーム)」の申請条件が厳格化されました。以前の条件と比較し、年齢や収入条件、預金額などが大幅に引き上げられました。これにより新たな申請は困難になり、既存の保有者も更新時に新条件を満たす必要があります。また、別の州であるサラワク州の「S-MM2H」にも注目が集まっています。この記事ではMM2Hビザのメリットや他の国との競争状況も紹介します。

マレーシア:MM2Hの申請件数が大幅減少   

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年5月12日

条件厳格化

今回の条件を、以前の条件と比較してみましょう。

申請条件従来新条件
申請可能年齢申請時点で20歳以上申請時点で35歳以上
収入条件月RM10,000(約30万円)以上月RM40,000(約121万円)以上
定期預金額50歳以上:RM150,000(約455万円)
49歳以下:RM300,000(約911万円)
年齢に関係なくRM1,000,000(約3,037万円)
流動資産50歳以上:RM350,000(約1,063万円)
49歳以下:RM500,000(約1,518万円)
年齢に関係なくRM1,500,000(約4,555万円)
ビザの有効期間10年間
更新可能
5年間
申請条件を満たせば5年ごとに延長可能
年間パス登録料RM90(約2,700円)/年RM500(約1.5万円)/年
MM2Hを申請条件

今回の厳格化により、新たにMM2Hを申請することが非常に難しくなったと言わざるを得ません。

更新には適用されず

新しい条件が発表された当初、更新も同様の条件に変更されるのではと憶測されていました。条件の改正前にすでにMM2Hビザを保有している場合、「マレーシア滞在が年間90日以上」「年間パス登録料のRM500/年」の2つの条件をさらに追加で満たす必要がありますが、そのほかの条件に関しては従来のままとなっています。

日本人MM2H保有者

2018年時点のMM2Hビザの総所有者数は42,271人でした。そのうち日本人は4,778人、日本人のシェアは11.3%で、中国人の12,000人強、シェア30%に次ぐ2番目に多い人数でした。

そもそもMM2Hビザは、リタイヤしたシニア向けの長期滞在ビザで、マレーシアの物価の安さに魅力を感じたシニア層が中心となっていました。実際、更新できた方のほとんどは、この新たな条件のもとでは、新規で取得条件を満たすのは難しいのではと考えられています。

サラワク州 マレーシア マイセカンドホー ム(S-MM2H)

マレーシアの長期滞在ビザには、サラワク州用のセカンドホームビザであるS-MM2Hがあります。上述のように2021年の改正でMM2Hの条件が厳格化されたため、このS-MM2Hに注目が集まっていますが、MM2Hとは条件が若干異なっています。

申請条件MM2HS-MM2H
収入条件月RM40,000以上月RM7,000(約21万円)
定期預金額年齢に関係なくRM1,000,000RM150,000(約455万円)
流動資産年齢に関係なくRM1,500,000RM150,000(約455万円)
年間パス登録料RM500RM90(約2,700円)
ビザ手続き費用RM5,000(約15万円)無料
申請条件

MM2Hではすべての条件を満たしていなければなりませんが、S-MM2Hでは、収入条件か定期預金額のどちらかの条件を満たしていればよいとなっています。

条件が異なったことにより、サラワク州のS-MM2Hへの関心が急速に高まっています。

MM2Hビザのメリット

多くの国の長期滞在ビザの申請条件は、語学力や宗教などに制限がある国が多いです。しかしMM2Hビザは語学力などは求められず、資産や収入条件を満たしていればOKです。そのため、高齢で資産のある方から、退職後の人生を充実させられるとして人気が高いのです。

MM2Hビザで働くことはできず、マレーシア国外での収入に頼って生活することになります。ただし、マレーシアでは国外源泉所得に対する課税がないため、日本で収入を得ていて日本で源泉徴収されている所得については、マレーシア国内では非課税となります。つまり、日本の会社などから受け取る給与などの所得については一律約20%の源泉課税のみで、日本居住者の税率55%に比べてはるかに税率が下がり、節税対策となるメリットがあります。

各国で条件競い合い

シンガポールやタイなどでも富裕層向けの新たなビザが始まり、各国で富裕層の囲い込みが始まっています。ただ、マレーシア以外の各国も超富裕層のみに対して優遇しており、この傾向はますます強まりそうです。

マレーシアは、14年連続で日本人が「移住したい国」で第1位という、ロングステイ先としての不動の地位を築いています。

今回の条件の厳格化でどのような影響が出るのか、滞在邦人の間でも心配されています。

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