ASEANサミット2025 特別レポート -シンガポールが主導する地域の安定

10月26日から28日までマレーシア・クアラルンプールで開催された第47回ASEANサミットに、シンガポールのローレンス・ウォン首相が出席しました。就任から半年あまり、初の本格的な多国間外交の舞台となりましたが、その発言や動きには新しい時代のシンガポール外交の輪郭がにじんでいました。
今回はASEAN2025について緊急レポートをします。
(引用元:ASEAN Malaysia 2025
https://www.myasean2025.my/)
ASEANサミット2025 特別レポート -シンガポールが主導する地域の安定
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年 11月17日
ASEANに求める「たくましさ」

ウォン首相は、開幕式でマレーシアが今年の議長国として掲げた「包摂性と持続可能性」というテーマに強く共鳴。ASEANは、もっと前向きで、もっとたくましい共同体にならなければならない—と語り、ある種の危機感がこもっていました。
シンガポールは、土地も資源も乏しい。だからこそ、地域とのつながりに敏感で、連携の重要性を誰よりも理解している姿勢が感じられました。
インフラやエネルギー、そして人的交流まで、細やかなネットワークをいかに機能させるのか。終始その視点はぶれていませんでした。
“実務重視”の姿勢
サミットの合間には、マレーシアのアンワル首相、そしてベトナムのファム・ミン・チン首相と個別に会談を行いました。とくにベトナムとは「包括的戦略パートナーシップ」に向けた行動計画を新たに立ち上げるなど、外交の足元を着実に固めました。
米中日韓など域外パートナーとの会話も活発に行われ、東南アジアという地理的・戦略的なポジションを活かして、シンガポールが”交差点”としての役割を強めていく姿勢が見てとれました。
実務的なテーマも次々に
注目されたのは、経済安全保障や農業・食料政策です。
たとえばベトナムとは、米を中心とした農産物の供給・輸出に関する協力拡大で一致。ウォン首相は「この不確かな時代に、備えることは国家の責任」とも語っていたのが印象的でした。
また、エネルギー連携や電力網の共有、域内の物流・デジタル基盤の強化といった”ASEAN全体でつながる”構想も議論が進められました。シンガポールはこうした構想においても、単に賛同するだけでなく、実行段階を見据えた具体的な立場を持ち込んでいたように思えます。
地域の「安定」をどう守るか
より大きなスケールの話題としては、南シナ海情勢や多極化する世界の中でASEANがどう立ち回るか、というテーマも浮かび上がりました。ウォン首相は、ASEANが中立性と開放性を維持しながら「競争ではなく協調による価値創造を」と提唱しました。
裏を返せばそれだけリスクが増しているということで、外交の言葉の穏やかさの奥に、いまの東南アジアが直面する難しさが垣間見えました。
「準備された国」の強み
私が以前から付き合いのあるシンガポールのビジネスマンは、「ウォン首相の発言は常に“数歩先”を見ている」と評していました。たしかに、議長国マレーシアが打ち出す方向性を事前に分析し、自国としての対応方針を早くから明確にしていたのは、さすがシンガポールだと思わされました。この“準備力”こそが、この国の最大の外交資源かもしれない、改めてそう感じました。
今回のサミットでシンガポールが得た成果は多いです。ベトナムとの新たな実行計画、そして域外勢力との協調姿勢の発信。どれも地味ですが、積み上げが効いてくるタイプの外交でしょう。
しかし、課題がないわけではありません。
計画を形にし、どれだけ早く動けるか、その道を誰よりも早くかつ確実に歩む力こそが、いまのシンガポールに求められています。




















