シンガポール 上半期の新車登録 中国BYDが首位に 

シンガポール

シンガポール陸上交通庁が先日発表した統計によると、2025年上半期の乗用車の国内新規登録台数において、中国電気自動車(EV)最大手のBYDがシェア19.5%でブランド別で首位だったと、地元新聞のストレーツタイムズが伝えました。

躍進著しいEVですが、中でも中国製のEVがアジアを席巻しています。

今記事では、あらためてシンガポールのEV市場について深掘りします。

(引用元:BYD the top-selling car brand in first half of 2025; parallel-import registrations continue to slide
https://www.straitstimes.com/singapore/transport/byd-tops-singapore-car-sales-in-first-half-of-2025-with-almost-one-fifth-of-the-market

(引用:ブイプレ|VPRESS・ベトナム情報版 https://www.vpress.asia/article/685e8f127cd94e726e8da9e3/

シンガポール 上半期の新車登録 中国BYDが首位に  

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2025年10月 2日

BYDがブランド別首位に

2025年上半期の新車登録台数は計23,957台。うちBYDは4,667台で前年比80.4%の大幅増でした。2位はトヨタ(3,461台)、3位にBMW(2,664台)、4位メルセデス、5位ホンダと続いています。これまで日本や欧州ブランドが優位だったシンガポール市場で、中国製EVがトップに立ったのは象徴的な出来事です。さらに、登録車の約40%がEVとなり、同国のEVシフトが急速に進行していることが明らかになりました。

EV普及を後押しする政策とインフラ

背景には、政策面での手厚い支援があります。政府はEV早期採用インセンティブと排出スキームを通じて、購入時に最大4万シンガポールドル(約460万円)の還元を実施しています。これらの制度は2025年末まで継続予定で、EV購入者にとって大きな後押しとなっています。さらに、最大6万基の充電器を整備する計画も進行中です。

BYDの戦略が市場で奏功

BYDは2022年から本格参入し、「Atto 3」などの主力モデルを投入しています。価格と性能のバランスを重視した戦略でテスラやBMWとの差別化に成功しており、バッテリーから車体設計までを自社で一貫開発する“垂直統合型”の体制も、価格競争力と品質管理の両立を可能にしています。

こうした流れはシンガポール特有の市場構造とも相性が良く、また、都市インフラが整っており、充電器の設置や利用が効率的で政策決定も迅速で、EV普及を“国家プロジェクト”として一気に推し進められる体制が整っています。

他国との比較

日本では 2025年上半期の新車登録数が前年比10.2%増と成長しており、トヨタが圧倒的優位を維持しています。しかしEV市場は依然低調で、2025年上半期のEV比率は 約2.3% にとどまり、中国ブランドの影響はほぼありません。

隣国マレーシアでは、2025年上半期に EV登録台数が約12,733台 に達し、前年比91%増、電動車全体では約30,500台規模(前年比35.6%増)です。EV比率が総車登録に占める割合は10%台前半程度と低めで、BYDはリーダーの一角を占めていますが、国産ブランドやハイブリッドが根強い人気があります。

今後の展望

シンガポールは小国ゆえに政策が柔軟かつ集中実行できる点がアドバンテージで、EV普及率や、中国EV勢の浸透スピードにおいて、マレーシアや日本よりも遥かに先を行っている印象です。

政府の補助制度が継続する限り、今後もEV比率がさらに上昇し、ハイブリッドを含む電動車全体が半数以上を占める可能性が高くなっています。

先行実験都市

シンガポールのEV市場は、単なる先進国のEV導入成功例ではなく、東南アジア諸国が直面する課題と機会を先取りして対応する『先行実験都市』として機能しています。

その経験・制度・市場データは、ASEAN諸国にとって模倣可能なモデルあり、今後の地域的EV展開における政策・産業・消費者の三位一体のベンチマークとなる存在です。

実験都市シンガポールの本領がEV市場では見事に発揮されていると言えるでしょう。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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