中国の飲食ブランドがシンガポールに殺到している 

シンガポール

12年以上シンガポールに住み今も毎年訪れている私には、このニュースが単なる出店ブーム以上の意味を持って響きました。街の空気や食文化が、そっと動き始めています。

そんな肌感覚を伴う“静かな大きな潮流”として、今回のニュースを見つめてみたいと思います。

(引用元:Chinese food and beverage firms flock to Singapore as first step in expansion drive | Reuters
https://www.reuters.com/world/china/chinese-food-beverage-firms-flock-singapore-first-step-expansion-drive-2025-10-12/

中国の飲食ブランドがシンガポールに殺到している 

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2026年 02月17日

なぜ今、シンガポールなのか

ロイターなど複数の報道を確認すると、中国飲食ブランドの“海外脱出”の背景には、中国国内の消費伸び悩み・価格競争の激化があります。

特に都市部ではプロモーション合戦がエスカレートし利益率が削られ、『中国国内では持続不可能。海外で新たな成長を探すしかない』そんな危機感が企業側に強まっています。

その最初の一歩として選ばれているのがシンガポールなのです。

理由は明快で、中国語が通じる消費者層・東南アジア案件への玄関口・ブランド発信地としての信頼性という利点が揃っているからです。

実際、報道ではわずか1年で85ブランド・約400店が展開したとのデータもあり、数字としても今回の波は裏づけられています。

「成功確定」ではない

とはいえ、「殺到=成功」とは限りません。調べてみると、

 ・賃料の高さ
 ・人件費の上昇
 ・既存ローカルブランドとの競争

など、参入後に直面する壁は決して低くありません。特に賃料の高さと人件費の上昇は他のアジア諸国よりもかなり高い壁になっています。

一部の中国チェーンにとっては、むしろシンガポールは試練の場所であり、成功ケースと撤退ケースが並ぶ二極化という指摘も専門家の間では聞かれます。

つまり今見えているのは、“勝てる店だけが次の東南アジア市場へ進むことができる”という側面なのです。

私が見てきた「街の風景の変化」

12年間シンガポールで暮らし、今でも定期的に訪れる者として、今回のニュースには強い既視感もあります。

シンガポールでは昔ながらのホーカー(屋台)が食の基盤です。しかし近年、ショッピングモールだけでなく駅直結のミニフードコートや住宅街の商店街にも、中国本土系のカフェ・麺店・火鍋店が静かに広がっているという印象があります。特にチャイナタウン近辺は変化が早く、昔からあったローカル店が、気づけば別の看板に変わっているというような光景にも何度か出会いました。

中国の新業態は「スピードと効率」で攻めてくる

モバイル決済・セルフサービス・回転率重視のオペレーションなど、中国本土らしい効率性がそのまま持ち込まれているのも中国系店の特徴です。地元紙の「Straits Times」 でも、データ活用の巧さや高速出店が強みとして指摘されていました。

一方で、こうした効率化は、ローカルの“ゆっくり食べる時間”が好きな層には必ずしも響かない可能性もあります。

マレーシアから見て感じる「もう一つのリスク」

私が今住んでいるクアラルンプールでも中国ブランドは広がっています。しかしクアラルンプールの場合、土地も広く店舗賃料に柔軟性があるため“過度な飽和”が起きにくいという特徴があります。

一方、シンガポールは違います。国土が狭く出店場所も限られるため、飽和のスピードが圧倒的に早いです。そのため私は、出店ラッシュではなく“数年後にどう淘汰されるか”が真の見どころだと感じています。

シンガポールの食はどこへ向かうのか

今回の『中国ブランド殺到』は中国国内の低迷・海外での新しい成長探し・シンガポールの受け皿としての強さが交差した結果として起きています。

しかし同時に、ローカルとの共存・賃料の壁・差別化の難しさという課題も、参入する全ての企業を待ち構えています。

今後、どのブランドが根づき、どのローカルブランドが残っていくのか。それは、シンガポールの食文化の次の10年を決める、静かで大きなテーマだと思います。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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