マレーシア発スーパーアプリ「Grab」
前回の記事で紹介した、マレーシア発の配車アプリ「Grab」。
2012年の創業からわずか10年、今ではマレーシア国民になくてはならないインフラの1つとして認識されています。改めてアジアのメガベンチャー企業の凄まじい成長に驚愕します。
そこで今回の記事では、「Grab」について詳しく解説します。
マレーシア発スーパーアプリ「Grab」
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2022年12月22日
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アプリの特徴
配車アプリ「Grab」とは、登録している一般のドライバーが、自分の車を使って乗客を目的地まで運ぶサービスです。
なぜ一般ドライバーのタクシーサービスがマレーシアで主流になったかというと、流しのタクシーに乗るとぼったくられることが多いからだと思います。
Grabでは目的地を入力すると料金が表示され、表示されたままの金額を支払えばよく、交渉の必要もなくてとても安心なのです。 また、料金を確認しての前払い(クレジットカードの場合)なので、悪質タクシーのように、わざと遠回りをして料金をぼったくられるようなことがありません。
英語が話せなくても大丈夫
アプリは英語表記ですが、簡単な英語が分かれば問題ありません。
ドライバーから確認のメッセージなどがアプリ内で送られてきますが、やはり簡単な単語を並べたような英語が多いので、親近感もわき、やり取りする上で問題点は全くありません。
ドライバーも乗車態度を評価されるので、真剣に向き合って運転します。
Grab成長の軌跡
Grabの成長の軌跡を記すと
2011 共同創業者でCEO のアンソニー・タン氏がハーバード・ビジネス・スクールの新規事業コ
ンペ内で配車サービス「MyTeksi(マイテクシ)」提案
2012 マレーシアで配車サービス「MyTeksi」を立ち上げる
2013 「GrabTaxi」に変更。シンガポール進出
2014 インドネシア・ベトナム進出
2016 社名を「Grab」に変更
2017 簡易決済アプリ「Grab Pay」開始
2018 フードデリバリーサービス「GrabFood」立ち上げ
2019 金融サービス「Grab Finance 」開始
2020 シンガポールでデジタル銀行立ち上げ
2021 米ナスダック上場
ほぼ毎年エポックメイキングな軌跡を残して成長しています。
また、2014年にはソフトバンクグループが約300億円を出資し、2018年にはトヨタが約1,000億円を出資しています。
Grab成長の理由
共同創業者のタン・ホーイリン氏の「Grabが、技術でこの地域の社会課題を解決し続けられると信じている」という言葉に、東南アジアでの爆発的な成功の秘密があると思います。
Grabは徹底したローカライズ戦略を行っていて、進出した各国の社会の実態に合わせサービスを変容させています。
カンボジアやフィリピンでは、トゥクトゥクやトライクシルといった三輪バイクタクシーのGrabを展開していたり、マイクロファイナンスで、インターネットアクセスや銀行口座開設などの生活の基盤におけるドライバー支援を行ったりしています。
また、アプリはユーザーのことを考え徹底的にわかりやすく、使いやすい設計になっています。
キャッシュレスという利点があり、Grabアプリには、GrabPayというプリペイド・トップアップ式のデジタル決済機能がついていて、ユーザーは自分の判断で支払い方法を選ぶことができます。
サービスの幅広さも魅力の1つです。配車のほかに、フートデリバリー、食品・日用品デリバリー、バイク便のエクスプレス配送、保険商品販売、少額ローン、レンタカー予約、ホテル予約等々。
しかも、すごいスピードでこれらの機能を充実させています。
マインドセットを変える
Grabの成長を目の当たりにしてきて感じることは、先進国ではマインドセットを変えなければ変革は難しい、ということです。
先進国に共通する特徴である厳しい規制、特に現代の日本特有の、協調を好み、何事にも完璧さを求めて失敗を恐れる社会では、速いスピードで変化することは難しいのかもしれません。
デジタル技術を駆使して社会に新しい価値や変革をもたらすには、マインドセットを変え、行動力と多大な熱量が必要だと痛感しています。