中国で注目!日本の整備された福祉:高齢者産業のビジネスチャンスとは
中国人の知人に「日本の福祉は良い」と褒められたり、「日本の福祉は良いと聞くが、何が良いのか?」と聞かれたりすることがある。これは筆者の周りの中国人だけの話ではなく、中国人の多くが日本の整備された福祉に関心を寄せているのだ。
何がそんなに中国人のなかで注目されているのか。
中国で課題が山積みとなっている少子高齢化の現況から見た高齢者向けサービス市場の状況と今後について紹介する。
中国で注目!日本の整備された福祉:高齢者産業のビジネスチャンスとは
著者:上海gramフェロー米久 熊代
公開日:2022年3月18日
100万人に迫る在日中国人:中国人が日本に移住する理由
2021年6月現在における在日中国人の人数は745,411人(引用:出入国管理庁:https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00017.html )である。
2020年の新型コロナウイルスの影響で前年末比-4.2%の減少となったが、194カ国から来ている在留外国人のうち、中国人の割合は1位となっている。2位のベトナム人はコロナ禍でも前年末比1,993人(0.4%)増で450,046人となったが、それでも1位の中国人とは大きく差が開いている。在日中国人はもうすぐ100万人に迫ろうとしている。
実際に、中国人の知人が数名日本に移住している。
中国人からすると、日本の物価の安さや福祉の充実度はとても魅力的で、中国人が日本へ移住、定住する理由の1つと言えるだろう。特に日本の整備された福祉には注目が集まっている。具体的には出産手当、産休、児童手当、子ども医療費助成、ひとり親家庭が利用できる各種制度、奨学金、失業手当、そして整った年金制度などである。
日本はすべての市民に対して誕生から老後までを保証する。そこに中国人の関心が集まっているのだ。中国人が注目する日本の福祉制度のなかで、特に関心の高い事柄は出産や子育て、老後についてなど、少子高齢社会に関することだろう。日本社会の高齢化は世界で最も深刻なレベルと言えるが、まさにその波が中国にも差し迫ってきている。
(引用:百度)
60歳以上の人口の割合が10%を超えるか、65歳以上の人口の割合が7%を超える場合、その国は高齢化社会に入ったと見なされる。2021年末までに、中国の60歳以上の人口は2億6,736万人に達し、国の人口の18.9%を占め、そのうち2億56万人は65歳以上で、国の人口の14.2%を占める。つまり、中国は「高齢化社会」に突入したのだ。
(引用:百度 https://mbd.baidu.com/newspage/ )
世界最大の人口を抱えている中国だが、世界と比較しても高齢者福祉制度がまだまだ整っていないのが現状だ。
高齢者向けサービスが追い付いていない 高齢化が進む中国
第一財経日報(電子版)によると、中国の高齢者の年間消費は2050年に106兆元(約1,930兆円)に達する見通しだ。14年の4兆元から26倍以上に増える計算で、高齢者向け製品やサービスの需要が大きく拡大することになる。ただ、高齢者向け製品やサービスの供給は不足している状況である。中でも、リハビリ器具など高齢者の生活を支える製品、医薬品、医療サービスなどは今後の発展が必要になると見られている。
(NNA ASIAhttps://www.nna.jp/news/show/2302623 )
さらに、中国では介護人材不足が深刻で、要介護者数4,000万人に対し、ヘルパーの数は約30万人に留まっている。中国では、2010年ごろから、いわゆる「一人っ子世代」の親の世代が60歳を超えてきている。兄弟姉妹がいれば両親の介護の負担を分担することは可能だ。しかし一人っ子の場合、すべての負担が一人の子供にかかる。家庭内だけで高齢者の世話や介護を完結させることは、これまで以上に難しくなってきている。こうした状況からも、家庭外の介護サービスに対するニーズはさらに高まり、介護人材の確保・育成の重要性は一段と高まるだろう。
(引用:JETRO https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2021/4550aa0c5cc6c400.html )
これらの背景をビジネスチャンスと判断し、外資企業が中国の介護サービス市場に続々投資、参入している。
日本は世界で最も高齢化が急速に進んだことで、介護サービスの分野において他国が経験していない成功や失敗を中国の高齢者向けサービス市場で活かすことができる。特に施設介護は抜け出ているものがあり、介護保険制度が始まる前から、施設介護は国策として整備されてきた(引用:ささえるラボ https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/356 )。さらに日本の文化とも言える、親切で丁寧なおもてなしの心は、介護事業の分野で「高い質」を発揮し、希少価値のある商品として中国で利用できるだろう。
まとめ
中国最大の検索エンジンを提供する百度の発表によると、全人代(全国人民代表大会 中国の国会に相当)のネットユーザーが最も注目している事柄は「社会保障」だった。超少子高齢化社会に突入していくうえでの関心の高さと、あらゆる手を用いてでも少子高齢化を食い止めようとする中国の姿勢が伺える。
中国における高齢者人口の増加に伴い、シルバー産業の市場規模は、2018年に6.2兆元、2024年には11.2兆元と、急成長が見込まれている。
(引用:経営ナレッジ 山田コンサルティンググループ株式会社 https://www.ycg-advisory.jp/learning/oversea_98/ )
未成熟な介護サービス市場への参入は慎重であるべきとの声もある。既に市場に参入していて苦戦している日系企業も少なくない。
しかし、世界でトップを走る長寿大国、且つ介護先進国の日本が手掛ける高齢者向けサービスを中国に広めるビジネスチャンスが到来していることは間違いないだろう。