女性層がカギ?急成長する中国のフィットネス市場

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人々の生活が急速に豊かになったこと、数年前から健康志向ブームを背景に、中国でフィットネス市場が成長している。ジムやヨガ、自宅でトレーニングをする姿を撮影して、充実した生活を送っている様子をSNSで投稿する人も増えた。当記事ではフィットネス市場人気の理由とコロナ禍で変化しつつある業界の状況、中国人女性消費者の人気ブランド2つを紹介する。

女性層がカギ?急成長する中国のフィットネス市場

   著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年7月15日

コロナ禍でトレーニングジムの閉鎖相次ぐ

中国人の朝は早い。お隣に住んでいる老夫婦は早朝4時から散歩に出かけている。近所の公園では、平日も土日も関係なく朝早くからランニングや太極拳、ダンスなどで体を動かすのだ。いたる所にあるトレーニングジムでも、老若男女問わず利用している人を見かける。中国のフィットネスクラブ会員数は5年連続で増加しているとAFP BB Newsは報じた。

上海市浦東エリアにあるトレーニングジム

21年12月時点の中国のフィットネスクラブ会員数は前年比6・9%増の7513万人で、人口浸透率も17年の3・5%から5・4%に拡大した。ただ、一部の地域で新型コロナウイルスの影響が続いたことにより、全国の「広義のフィットネス(身体素質の向上を目指す各種運動)」関連施設数は14万9千ヶ所と前年に比べ5・1%減少した。うち、営利目的のフィットネスクラブは5・4%減の4万1917ヶ所、フィットネススタジオは3・0%減の5万1939ヶ所だった。
(引用:AFP BB News https://www.afpbb.com/articles/-/3410326

現在、再び新型コロナウィルスが中国で猛威を振るっている。新規感染者が増加し、上海市では2ヶ月間のロックダウンとなった。解除された現在も新型コロナウィルスは終息せず、感染者や濃厚接触者が判明すると小区は数日の封鎖を余儀なくされ、外出は許されない。また、トレーニングジムやプール、ヨガなどのスポーツ施設が封鎖されることも多く、自宅でトレーニングする人が増加しているという。

中国のフィットネス市場に新しい風となるか

オンラインショップではダンベル、弾性バンドなどの小型フィットネス器具の売り上げが月間3万個を超えている。投資金融コンサルティング会社「灼識咨詢(China Insights Consultancy)」によると、2021年末までに中国のフィットネス市場の規模は7866億元(約15兆1304億円)に達し、そのうちオンラインフィットネス市場は47%を占め、2022年にはオフライン市場を超えるという。さらに中国のフィットネス市場の規模は今後5年間、年間平均13.5%の成長率で1兆4793億元(約28兆4546億円)に拡大し、世界市場シェアの約20%を占めると予測する。
(引用:AFP BB News https://www.afpbb.com/articles/-/3404566

上海市に住む20代の知人は、近所のトレーニングジムに週4回は通っていた。しかし、新型コロナウィルスの影響で施設が何度も封鎖になり、以前のように体を鍛えることができずストレスが溜まっていったという。現在はダンベル、懸垂器具、トレーニング用の椅子、騒音防止マットを購入して自宅でも筋トレを始めた。「トレーニングジムが再開したらまた通うけど、仕事で疲れてジムに行く気力がないときは在宅トレーニングをするつもり」と彼は話してくれた。

フィットネス市場が人気となっている理由とは

中国では急速に生活水準が上がり、中間層の使えるお金が増えたこと、健康志向ブームとなっていることなどがフィットネス市場の拡大に繋がっている。また、中国政府が国民に対し健康的な生活を送るよう促していることが、業界への大きな追い風となっている。

中国政府は2025年までにスポーツ関連産業を8,000億ドル(約85兆円)規模に成長させる方針を打ち出しており、企業の参入意欲も高まっている。アリババはスポーツECサイトAlisportsを昨年開設、国際サッカー連盟(FIFA)とナショナルフットボールリーグ(NFL)ともスポンサー契約を結んだ。
(引用:Forbes JAPAN https://forbesjapan.com/articles/detail/12482/2/1/1

女性消費者が急増 2つの人気スポーツブランド

JDのデータによれば、今年の「6・18セールスキャンペーン」で、女性関連のスポーツ商品の売上額は前年同期比280%も伸びた。Tmallの統計では、この1年、約12万人以上の女性ユーザーがTmallでスポーツ用品を購入した。中国代表の天才美少女、谷愛凌(アイリーン・グー)選手が北京冬季五輪で金2個・銀1個を獲得する快挙を遂げ、19歳の鄭欽文選手がテニス四大会のデビューで、全仏オープンの16強入りを果たしたことなどが影響しているとみられる。これら女性選手に励まされ、多くの中国人女性がスポーツに参加し、自己価値の実現を楽しんでいる。女性によるスポーツ用品の購入が、フィットネス市場を大きく占めている。
(引用:China Radio International https://japanese.cri.cn/2022/06/22/ARTIXQKxnoPDqP6959rhN1Cp220622.shtml

新興スポーツブランド「lululemon」

カナダ発のスポーツブランドlululemonは、女性向けアパレルヨガウェアが人気で中国において急速に成長している。おしゃれなデザイン、通気性や伸縮性に優れて肌触りがよく、高機能・高品質であることが人気の理由である。スポーツブラはソフトタイプとハードタイプがあり、シーンによって使い分けることができる。最近は登山用ウェアも販売するなど「自然」のイメージが強いブランドだ。大規模なヨガイベントを行うなどしてその知名度をさらに広めている。ショッピングセンターにあるいくつかのスポーツ用品店のなかでも、筆者が見た限りlululemonが一番客で賑わっていた。

日本のスポーツウェアブランド「DESCENTE」

国内大手スポーツブランドANTAと資本提携しているDESCENTEは、プレミアムスポーツブランドとして中国で定着している。店頭のマネキンが着ているウェアからも見てわかるように、lululemonとDESCENTEのブランドイメージは異なる。DESCENTEは『自分らしいスタイルにこだわりを持った女性』という魅力的で強い女性をテーマに、上質でアクティブなスポーツスタイルを提案している。

DESCENTEが資本提携しているANTAは、アリババ・グループが運営するショッピングサイト「天猫6・18セールスキャンペーン」開始後わずか4時間で、運動靴類の商品で売上額1億元(約20億円)の大台を突破した中国の最大手スポーツブランドだ。
(引用:China Radio International https://japanese.cri.cn/2022/06/22/ARTIXQKxnoPDqP6959rhN1Cp220622.shtml

まとめ

新型コロナウィルスの影響を受けてもなお、中国のフィットネス市場は世界最大規模をキープしているという。在宅トレーニングという新しいカテゴリーも増え、ライブ配信やVR、ゲームなどを活用した自宅でできるスポーツは幅広い層から人気が高い。様々なビジネスチャンスを秘めている中国のフィットネス市場の動向に今後も注視する必要があるだろう。

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