日本企業も参入 中国で高級食器・テーブルウェアの人気高まる
経済成長が著しい中国では、近頃化粧品やコーヒー、アイスなどプレミアム市場の需要が拡大している。高級路線をいく中国市場だが、さらに食器・テーブルウェアの波が来ており、日本や海外からの輸入食器は中高級品に集中しているという。今まで大量生産型だった食器産業は、現在ハイエンド市場の需要が拡大しているのだ。現地の様子や注目される日本食器、その市場規模について紹介する。
日本企業も参入 中国で高級食器・テーブルウェアの人気高まる
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2022年10月31日
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中国のテーブルウェア売場とSNSの反応
上海や北京など一級都市では海外の文化が多く取り入れられ、生活が多様化している。海外料理店が増えて、一般家庭にも日本のカレーライスのような海外料理が浸透している。海外の食文化が広まるに伴い、食器やカトラリーなどのテーブルウェアに洋食器や和食器などが身近に取り入れられている。
消費者は天猫などのECサイト、スーパーマーケットやデパート、家電量販店、専門店、路面店でテーブルウェア商品を購入している。中国式食器、洋食器、日式食器などバリエーションがあり、特に洋食器はどこの店でも比較的多く販売され、商品を手に取る客も多い印象だった。
中国のSNSで「餐具」と調べるとたくさんの投稿が出てくる。投稿を保存して後で見返す人が多く購買意欲の高いカテゴリーのようにである(筆者意見)。上海市にあるニトリやテーブルウェア専門店で取り扱う日式食器の投稿も多く見られた。
中国の食器・テーブルウェア 高級市場の需要高まる
2014年以来、中国の日用陶磁器製品の輸入規模は上昇しており、2020年の輸入数は1,049万トン、輸入額は897,441万ドルとなり前年比15.4%増となる見込みである。中国の日用陶磁器の輸入は、海外からの中高級品に集中しており、イギリス、イタリア、日本、ドイツなどの日用陶磁器が圧倒的に多い。近年、国民の消費水準に伴い、海外の中高級日用陶磁器に対する需要が急速に高まっている。
中国の日用陶磁器製品の用途は、主に家庭用と業務用に分けられ、業務用はさらにホテルとレストランに分けられる。家庭用、商業施設(ホテル、レストラン、アパート)、飲食店などで使われる日用陶器はここ数年、家庭用が65.8%、商業施設は24.6%のシェアを占めている。
(引用:德科创艺 https://www.decogo.com/article/?1464752)
経済が発展し続ける中国では共同富裕が後押しとなり、さらに生活水準が向上する見通しだ。中国消費者から日本ブランドは品質が高く良いものだと認識されてはいたものの、なかなか高価格で受け入れられない時代もあった。しかし、中国の経済は発展し続け、全国一人当たり可処分所得は2010年の2万5974元から2021年は3万5128元と増加(筆者調べ)。高価格帯の海外製品を受け入れられる水準となり、生活の質を求める層が増加していることは市場の需要が高まっていることと関係している。
ウエッジウッド、マイセン、ロイヤルコペンハーゲン、バカラ、セーブルなどのブランド洋食器が消費者から人気が高い。上海市にあるデパートの高級食器売場にはティーカップの品揃えが多かった。筆者は先日、友人の中国人女性からウエッジウッドのペアカップをお祝いでいただいた。プレゼントとしても輸入のブランド食器は中国人に需要があるようだ。また、中国のテーブルウェアブームの波に乗る日本企業も現れている。
中国市場に参入する日本企業
九谷焼の人気が高まっている。新型コロナウイルス禍で2020年度の生産額は落ち込んだが、21年度には海外需要で持ち直した。10年前から中国やアジア、北米へのインターネット販売に力を入れ、5年前には中国の大手通販サイト「天猫モール(Tモール)」で取り扱われるゆになり、売り上げを伸ばした。コロナ禍で国内の売り上げが打撃を受けても年商は伸び続けた。花鳥や干支(えと)を絵付けした食器、招き猫などの置物が中国では人気のようだ。コロナ禍で外出が制限される中、ネットで影響力を持つインフルエンサーが商品を紹介する「ライブコマース」や販売サイトが急速に浸透した。華やかな色絵の九谷焼は中国人の嗜好(しこう)に合うという。
(引用:北陸中日新聞 https://www.chunichi.co.jp/article/459894)
筆者が中国で物件選びをしていた際、中国人の仲介業者が「日本人は清潔を好むが中国人は豪華を好む」と言っていた。メンツをとても大切にしている中国人にとって豪華な商品は人気が高い。見栄を張って少し無理をしてでも高級ブランドを使いたいという消費者心理がある。華やかな絵柄の日本の九谷焼が生産が需要に追い付かないほど人気があることにも頷ける。
中国の高級食器ブームとは着眼点がズレるが、食器というカテゴリーで、中国に住む日本人から認知度が高く大人気のブランドがある。2012年上海発の日本人が販売している食器ブランド「HAPPY CLAY」は現地駐在妻の間でとても有名だ。店舗を持たずポップアップショップで商品を販売している。筆者が訪れたショップには日本人の駐在妻やママ友口コミで広がった中国人妻たちであふれかえり、まさに奪い合いのような人気ぶり。食器を何枚も持った買い物客の行列ができるほどだった。価格は50元(約1000円)~170元(約3,400円)ほどで、絶妙な色とカラーバリエーションが豊富なデザインで、何枚も揃えてしまいたくなる魅力がありリピート率が高い(筆者調べ)。
まとめ
近年、中国では生活水準の向上により中間層が増加している。アイスやコーヒー、化粧品やシャンプーなどあらゆる業界でプレミアム市場が注目され、消費者は準必需品などちょっとした贅沢品の購買意欲が高まっている。中国では様々なものごとが物凄いスピードで流行るが、それが冷めるのもまた早い。高級食器の需要がいつまで続くのか、今後も動向を注視する必要があるだろう。