中国における日式ラーメン事情|現地の人気店から見える特徴とは
日本人の国民食ともいえるラーメンは中国でも人気で、「日式ラーメン」と呼ばれている。中国に進出している日本の外食チェーンはいろいろあるが、熊本発の「味千ラーメン」は中国で500店舗以上を展開しており、圧倒的な知名度を誇る。他にも都市部を中心に日式ラーメン店は数多くあるにも関わらず、新しい店の開店が続いている。本コラムでは、現地の人気日式ラーメン店の特徴、今年4月上海市にオープンしたばかりの丸亀製麺トリドールが手掛ける豚骨ラーメン店について、中国人の反応などを現地からお届けする。
中国における日式ラーメン事情|現地の人気店から見える特徴とは
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年5月28日
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ラーメンの起源は中国から?現地の麺事情
麺の歴史は長く中国が発祥の地といわれている。中国の麺料理は日本に伝来し、日本の食文化と融合、それが発展して生まれたのがラーメンだ。麺大国の中国には様々な麺料理があるが、汤面や兰州拉面は日本のラーメンに近い麺料理だろう。出汁をとったスープに麺が入っており、具は最小限というシンプルなメニューだ。弾力のある日本のラーメンに比べ、中国の麺は柔らかい。
中国人は麺料理の他に、高菜やジャガイモなどの野菜を炒めたり酢漬けにしたりしたもの、卵、羊肉串、魚などの一品料理を注文して食べることが多い。中国人の友人と軽くランチをしようとすると、メイン料理以外にいろいろな料理を注文してくれるので食べきれず、残りはダーバオ(持ち帰り)をするのが一般的である。
中国はインスタント麺を世界で一番よく食べる国としても有名だ。
世界ラーメン協会(WINA)によると、2022年1~12月の世界の即席麺総需要は1千212億食、前年比4.0%増と過去最高を更新した。上位国/地域は表の通り。1位中国・香港は450億食超でシェア37%と断トツの存在。2位インドネシアもシェアは12%と高い。3位のベトナムは最も成長著しく、20年に29%増、21年に22%増と急伸した。22年は微減ながら高水準をキープ。インスタントラーメン発祥国の日本は3年連続で5位となった。
(引用元:食品新聞
https://shokuhin.net/75716/2023/05/22/kakou/sokuseki/)
中国のスーパーにはインスタント麺の棚があり、日本の製品も並んでいる。特に日清の出前一丁を見かけることが多く、知名度の高さが伺える。このように中国人にとって麺料理はソウルフードとなっており、ラーメンは親しみやすい日本食のひとつである。
丸亀製麺トリドール、豚骨ラーメン店を中国にオープン
筆者が住む中国上海市では、至る所に日式ラーメン店が存在している。味千拉麺、一蘭、一風堂、一舎幸など、豚骨ラーメンを売りにしている店は知名度が高く店舗数も多い。中国人に人気の中国系スーパー銭湯に行った際、中国人の友人は数あるメニューの中から豚骨ラーメンを選び、子どもと一緒に食べていた。「コクがあるけどヘルシーだからラーメンといったら豚骨味が一番好き」と話してくれた。中国では豚骨味は幅広い年齢層に受け入れやすい味で、ラーメンといったら豚骨味を思い浮かべる中国人は少なくないだろう。
2022年に中国から撤退した丸亀製麺トリドールが、日本の「ずんどう屋」という豚骨ラーメン店を買収し、今年2024年4月上海市にオープンさせた。早速筆者も土曜日の昼過ぎに行ってみたが、常に行列ができており、中国人の注目の高さが伺えた。店内に入ると、子どもにはずんどう屋のオリジナルお守りとミニアイスのサービスがある。中国の飲食店で食後にアイス等のデザートやコーヒーのサービスをする店は多いが、ラーメン店では珍しいサービスだ。老若男女問わず家族連れも多く、店内のカウンターとテーブル席は常に満席状態だったが、注文してから10分以内に料理が運ばれてくるので回転が早い。
上海市の日式ラーメンといえば安くても1杯400元(約800円)前後の店が多いように感じるが、ずんどう屋で一番売れている豚骨ラーメンは、1杯36元(約720円)、一番安いラーメンは33元(約660円)と他よりも若干安く、中国の食べログといわれている大众点评(ダージョン)のクーポンを使用すると1杯約30元(約600円)で食べることができる。冒頭でも少し触れたように、中国ではメイン料理の他に一品料理を注文することが多いため、ラーメンだけで30元前後という価格は日常的に親しまれることだろう。ちなみに、ずんどう屋で中国人が注文する一品料理は、餃子よりも唐揚げを食べている人が多いように見受けられた。
豚骨ラーメンの味は日本版と中国版の2種類から選択することができる。日本版は日本で食べるラーメンと同じ味で、こってりとした日本人が想像した通りの食べ慣れた豚骨ラーメンだった(筆者の個人意見)。中国版はかなりあっさりめで、スープも一緒に飲み干せて最後まで楽しむことができる。筆者が店内を出たあとも列が途切れることはなく、大盛況の様子だった。
現地から見る人気日式ラーメン店の特徴とは
筆者が個人的に感じる、中国上海市の人気ラーメン店から見えてくる共通点や特徴については以下の通り。※すべての店に当てはまる訳ではない。
●一品料理が豊富
中国人はメイン料理の他に一品料理を注文することが多い。これはラーメンに限らず、寿司屋に行っても、寿司よりも一品料理を多く注文している客が多いのではないかというくらい、どこの店に行っても品数多く注文する傾向にある。日式ラーメン店にある一品料理は、餃子や唐揚げ、チャーシュー丼、カレーライス、おにぎり、エビフライやアジフライ、枝豆、中国人が大好きなたこ焼きなど、店によって様々。中国に500店舗以上を持ち、中国の食べログ大众点评(ダージョン)でも口コミの高い味千拉麺は、特に一品メニューが豊富である。
●期間限定メニューなど特色のあるラーメン
中国はどの業界も常に新しい商品が発売されたと思うと瞬く間に流行が去り、またすぐ違うトレンドが来る傾向にある。消費者を飽きさせることがないよう斬新なアイディアが求められるため、ラーメンのメニューが豊富で様々なニーズに応えられる店は繁盛しているイメージが強い。上海市にある益市拉麺は毎月数回、期間限定ラーメンを発売している。煮干し中華そばや横浜系ラーメン、魚介つけ麺、二郎系ラーメンなど、期間限定でしか食べられないという特別感がある。オープンしてから今年で2年目となるが、週末の昼時は列ができるほどの人気ぶりだ。
●ファミリー向けの店
日本で都内の人気ラーメン店に小さい子どもを連れて食べに行くのはなかなかの勇気が必要だが、中国では祖父母やお手伝いさんを含め、家族連れで外食をする機会が多い。子どもに対して優しい文化もあり、どこのラーメン店もテーブル席が用意され、客から言わずとも店員が子ども用の食器や椅子は必要か聞いてくれる。上海市の大勝軒には座敷席がいくつかあり、家族連れがよく利用している姿を見かける。中国のラーメン店はどこも比較的広い場所が多く、家族連れに優しい。
まとめ
海外で人気のラーメンは中国でも話題性が高く、ラーメンマニアの中国人も多い。昨今の日中関係の悪化や文化的な問題は根深く、複合的で複雑な問題もある。しかし、中国で成功することは世界で成功する鍵となると考えている企業も多い。中国におけるラーメン市場は確かにデメリットもあるが、メリットを見過ごせない将来性のある巨大市場で、新しいビジネスチャンスを生み出している。