ユニコーン企業の輩出国|スタートアップが盛んなエストニア
エストニアはITだけの国だと思っていないだろうか。実はエストニアはスタートアップが盛んな国で、企業価値が10億ドルを超えるいわゆる「ユニコーン企業」が複数存在している国である。ユニコーン企業の数はアメリカのような先進国には劣るが、人口を考慮するとその数は決して小さくはない。なぜ成功する企業を生み出すことができるのか。エストニアにあるユニコーン企業の紹介とともにその理由を説明する。
ユニコーン企業の輩出国| スタートアップが盛んなエストニア
著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2023年10月23日
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ユニコーン企業とは
ユニコーン企業とは、企業価値が10億ドルを超える未上場の新興企業のことを指す。端的に言うと、「ものすごく成功したベンチャー企業」だ。2013年に投資家のAileen Leeによって作り出された言葉である。
聞き馴染みのない単語であるが、ユニコーンを想像してみるとその名がつけられた理由がわかる。ユニコーンは海外の伝説の中に登場する馬のような姿をした動物。つまり、成功するベンチャー企業はめったにないことを伝説の動物を用いて婉曲的に例えているのだ。
日本の企業だと、2013年に創立したメルカリがこの定義に当てはまっていたのだが、2018年に上場したためユニコーン企業の定義から外れた。
(引用元:Investopedia https://www.investopedia.com/terms/u/unicorn.asp)
(引用元:DIGITAL INITIATIVE https://d3.harvard.edu/platform-digit/submission/mercari-the-selling-app-japans-first-unicorn-taking-e-commerce-by-storm/)
エストニア発祥のユニコーン企業
エストニアで初めてユニコーン企業が出現してから2023年3月までに、エストニアからはユニコーン企業が10個輩出されたと政府は発表している。そのうち4つを紹介する。
・Skype
エストニア初のユニコーン企業で、かつ最も有名になったのがSkypeだ。コロナ禍でZoomが爆発的に普及し、ZoomがSkypeに取って代わったと思われがちだが、2023年の現在でもアクティブユーザー(月に一度は使う)が3億人いる。ユニコーン企業の代表格である。
(引用元:EARTH WEB https://earthweb.com/how-many-people-use-skype/)
・Bolt
以前別の記事でも紹介した、配車サービスを軸とした企業。2013年、創業者は19歳という若さで兄とともに起業し、今では電動スクーターのシェア、フードデリバリーと事業を拡大し、2021年からはカーシェアリング事業にも参戦した。いまやヨーロッパでは40以上の国でBoltのサービスが利用できる。
・Playtech
世界最大のオンラインゲームソフトウェアサプライヤーであるこの企業。創業の計画者はエストニア人ではなくキプロス系イスラエル人だ。会社の所在地にエストニアを選び、複数の分野から優秀な人材を集めて作られた。Playtechは現在、300以上のゲームブランドを所有し、150以上のグローバルライセンスを持ち、世界19ヶ国にオフィスを構えている。
・Wise
日本ではあまり聞き馴染みのない企業だが、海外在住経験がある人は耳にしたことがないだろうか。国際送金サービスを主とする企業だ。
銀行などで国際送金をしようとするとどうしても手数料が高くつく。Wiseを使うとその手数料が格段に安くなるのだ。
(引用元:Invest in Estonia https://investinestonia.com/the-full-list-of-estonian-unicorns/)
なぜユニコーン企業を輩出できるのか
たった10個ユニコーン企業を輩出したことがそんなにすごいことなのかと捉えるかもしれない。たしかにアメリカには704ものユニコーン企業があるとされ、その差は歴然であるが、エストニアの人口を一度考えてみてほしい。約130万人だ。さいたま市の人口と同程度しかいない国が成し遂げたことだと考えると、10という数字が持つ意味がいかに大きいか、おわかりいただけるだろう。
なぜエストニアがユニコーン企業を輩出できるのかという理由のひとつに、合理化されたデジタル技術がある。15分ほどでオンライン起業ができ、マウスを数回クリックするだけですぐに確定申告ができる国はそうそうない。加えて、シンプルで透明性の高い税制であることも起業家を輩出できる要因になっていると言われている。
(引用元:Inbest in Estonia https://investinestonia.com/estonia-leads-europe-in-startups-unicorns-and-investments-per-capita/)
まとめ
エストニアがユニコーン企業を輩出できる理由は、まず1つ目にデジタル技術があること。政府サービスの多くがオンライン化されており、このようなデジタルインフラの整備は、新しいビジネスモデルの採用やイノベーションを促進する土台を作っている。
そして、2つ目に起業に適した環境があること。簡単にできるオンラインでの手続きや、透明性の高い税制は新しいビジネスの立ち上げや運営にはもってこいの環境だ。
総じて、エストニアのユニコーン企業の成功は、国のデジタル戦略、起業家にとって支援的な環境から成り立っている。どちらも一朝一夕では成し遂げられない仕組みではある。しかしながら、国レベルでなくとも自治体などでも起業を支援する環境を整えることで、世界と戦える企業が育つのではないだろうか。