ウクライナ情勢 オランダの反応
2月24日に起こったロシアのウクライナ侵攻に対するオランダ国内の反応は?
欧州のメジャーな国(英国、ドイツ、フランスなど)の反応は、日本のメディアでも取り上げられるが、オランダのような欧州の小国のニュースはなかなか国際電波に乗ることは多くはない。オランダもロシアから天然ガスを買っており、今回のウクライナ侵攻による供給への影響やNATO一員としての立場、難民の受け入れなどが懸念されている。
ウクライナ情勢 オランダの反応
著者:オランダgramフェロー 久国 尚美
公開日:2022年3月2日
プーチンへの憤り
オランダの世論を注視してみると、一番最初にガツンと来る感情は「深い悲しみ」です。「ユーゴ紛争終結から20年そこそこしか経っていないのに、また同じことを繰り返すなんて、人間はなんと愚かなんだ」 「よりによって再びヨーロッパの地で戦争が起きるなんて、到底信じられない」「どうして私達人類は歴史から何も学ぼうとしないのだ」などというもの。
悲しみの次に見て取れるのは、ロシア政権への、とりわけプーチン大統領個人への「憤り」です。一国の大統領の非倫理的なエゴと独断による暴走に対して、人々は沸沸とやるせない怒りを宿しています。欧州各国ではコロナへの規制緩和が続々と表明されている中で、二年越しでようやく人々の表情も明るくなってきました。そんな中で、どうしてまた人間が人間の手によって他の人間の自由を奪うようなことをするのか、という落胆が隠しきれないという現状が見て取れます。
オランダ首相マルク・ルッテ氏の反応
RTLニュースによると、ロシアのウクライナ侵攻の第一報を受けて、ルッテ首相(自由民主党)は次のように声明を出しました。「今日という日はウクライナのみならず、ヨーロッパ、いや全世界にとって非常に暗くて重い一日です。さまざまな外交努力がこの最悪の状況を避けるために行われて来ましたが、すべて無駄に終わってしまいました。この責任は唯一の国家、そして唯一の人間、ウラジーミル・プーチンにあります」と、プーチン大統領を名指しではっきりと強く非難しました。「オランダはロシアの行為を到底容認しません。冷戦崩壊後に別々の道を歩いてきたウクライナに対して、このような方法で蹂躙することは到底許されるものではありません。それと同時に、ロシアという一国家がヨーロッパ全体の安定と安心を脅かしているこの現状に対し、抑えきれない憤りを覚えます」と続けました。
更に、陸続きであるオランダが現実的に影響を受ける可能性のある事項として、以下のことを国民に説明しました。1つ目はNATOの一員であるオランダ国内での軍事的活動(NATO軍隊や軍物資の領土の通過など)が通常より活発になること、2つ目はウクライナから西のヨーロッパ諸国に流出する難民の動きを注視すると同時に、必要な受け入れ準備を進めていくこと、そして最後に、国内供給の大部分をロシアに依存している天然ガスの価格高騰の可能性を注意深く見守っていくということです。
一般市民の反応
翌24日には早速アムステルダム、ロッテルダム、ハーグなどの都市でSNS等の呼びかけに応じ集まった数百人規模の群衆が、「ストッププーチン、ストップ戦争」とデモ行進を行いました。オランダ国外でも、パリのエッフェル塔、ベルリンのブランデンブルグ門、ロンドン・アイの観覧車等が、ウクライナの国旗の象徴である青色と黄色の電飾を灯してウクライナとの結束を表明していますが、オランダ国内ではロッテルダムのエラスムス橋が青色と黄色の電飾に着替え、ウクライナとの結束を表明しています。
フェイスブックなどのソーシャルメディアにおいても、いち早くプロフィール写真にウクライナの国旗を貼り、ウクライナへの支持と祈りを表明する動きが拡がりました。
オランダには2017年にウクライナ領空でロシア寄り勢力により民間機が撃墜され、298名の尊い人命が奪われたという非常に辛い過去があります。そのMH17(撃墜されたマレーシア航空機の便名)鎮魂碑がアイントホーヴェンという街の外れにあるのですが、そこにもひまわりの花が献花され、多くの人がウクライナに対する支持と戦争反対を表明し、同時に世界平和を願うために訪れました。
増えることが予測される難民への援助
国連によると、最少でも10万人、最大で500万人(4,400万人のウクライナ人口の約10パーセント)もの難民がウクライナから流出すると予測されています。すでに首都キエフからポーランド、スロヴァキア、ハンガリーなどのウクライナの西側隣国国境方面への道は長い渋滞ができている状態です。現時点では、その多くはポーランドに流れると見られています。
ウクライナとオランダの距離は2,000キロ程度。2017年にオランダとウクライナ両国は、観光目的の場合は最大90日間ビザ無しで入国できる協定を結んでいます。よってオランダ政府は難民の流入があることも十分想定しています。実際オランダに在住のウクライナ人も少なくないですし、知人でウクライナ人と婚姻関係にある人が、昨日親族を迎えにキエフまで車を出したという話なども身近にあります。
世界的に「ケチ」と言われるオランダ人ですが、必要な状況にいる人への寄付は決して惜しみません。UNICEF、UNHCR、赤十字などの団体が続々と専用募金窓口を開き、現時点(2月25日)で、赤十字だけでも450,000ユーロ(日本円で6千万円弱)もの民間からの募金が既に集まっていると発表しています。
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