日本企業を偽装?ヨーロッパでも人気の雑貨店MINISO
日本人にはあまり馴染みのない、”日本のブランド風”でグローバル展開するMINISO(メイソウ)は、2013年に設立された中国広州を拠点とする雑貨店だ。2024年現在も拡大を続けており100ヵ国以上に6000以上の店舗を展開、世界的なブランドとしての地位を強固にしている。しかしユニクロを連想させるロゴとダイソーを思い出させるネーミングは、世間からも「ユニクロ・ダイソー・無印良品を足して3で割った雑貨店・日本ブランドを装ったパクリ」との批判が集まった。
同社は設立当初から「本社は東京」と紹介していたスタンスを一転、2022年には公式に”日本風ブランド”を偽装していたことを認め謝罪するなど、企業のアイデンティティに関する透明性の欠如が問題視された。しかし様々な疑惑・懸念などの課題を抱える中でもMINISOは躍進を続けており、今年6月にはパリにヨーロッパ最大の旗艦店、また9月にはドイツに初のIPコレクションストアをオープンするなどヨーロッパ市場でも大成功を収めている。
日本企業を偽装?ヨーロッパでも人気の雑貨店MINISO
著者:スペインgramフェロー 北田ミヤ
公開日:2025年1月15日
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MINISO(メイソウ)とは?
MINISO(メイソウ)は2013年に設立された中国を拠点とするライフスタイルブランドで、現時点で100ヶ国以上に店舗を展開しており、2024年現在では東南アジアやインドなどの新興市場での成長も著しい。
イギリス・フランス・イタリア・スペイン・ドイツを含むヨーロッパ諸国での出店も順調で、その数は240店舗以上にのぼる。今年9月にドイツ・Essenのエンターテイメントの中心地に位置するLimbecker Platzショッピングセンターにオープンした、人気のサンリオ・ディズニーなどIP(知的財産)関連製品が店舗の70%を占めているIPコレクションストアは大きな話題を集めた。
創立10周年だった昨年2023年5月にはニューヨーク・タイムズスクエア、同年11月にはイギリス・オックスフォードストリートと、各国の一等地に華々しくオープンさせるなど世界にその名を轟かせている。
MINISOグループの最新の財務報告によると現在の収益は21.4億ドル。2023年、同社は19.5億ドルの収益をあげ、2022年の14.6億からも増加し続けている。
(参考:companies market cap :MINISO Group (MNSO) – Revenue
https://companiesmarketcap.com/eur/miniso-group/revenue/)
(参考:Company Announcement – FT.com :MINISO Opens First IP Collection Store in Germany’s Essen, Marking a New Chapter in European Expansion
https://markets.ft.com/data/announce/detail?dockey=600-202409291252PR_NEWS_EURO_ND__EN18534-1)
(参考:About Us | MINISO | MINISO
https://minisoshop.co.uk/about-miniso)
MINISOが抱える様々な問題
MINISOは設立からわずか3年で1500店舗に拡張、2021年には5000店舗を超え、海外進出にも成功し急速なグローバル展開と成長を遂げた。設立当初は怪しい日本語の商品名をプリントした商品を販売したり、日本に本社があるイメージを広めたり、日本企業を装ったブランドの起源、透明性に関する懸念、知的財産権の侵害に関する疑惑、品質に関する懸念、グローバル展開における文化の不適切な扱い等、様々な問題も抱えている。
特に批判をめたの集めたのが、2022年の7月下旬にスペインのMINISO代理店がインスタグラムに投稿した記事だ。チャイナドレスを着たフィギュアの写真に「日本の芸妓の衣装」と説明書きをし、中国のSNSウェイボーでも誤った情報だと批判・拡散され炎上、同社がスペイン代理店の投稿を謝罪する事態に陥った。
その後もバハマ店舗のインスタアカウントで「日本生まれの企業」と記載されたり、アメリカ店舗で「From JAPAN」と掲示されたりと”日本企業”偽装の証拠が次々拡散され、2022年の日本風ブランド戦略を認めた公式謝罪に至る。
(参考: Global Times :Chinese retailer MINISO apologizes for mistranslating Qipao toy into ‘Japanese Geisha’ on overseas social media
https://www.globaltimes.cn/page/202208/1272654.shtml)
ヨーロッパ最大の店舗をオープン|パリ・シャンゼリゼ通り
ヨーロッパ内では前述の通り、今年9月にドイツにIPストアをオープン、その3か月前の6月にはヨーロッパ最大となる旗艦店をパリ・シャンゼリゼ通りにオープンさせ、こちらも大きな話題を集めた。パリ・シャンゼリゼ通り店のオープン初日にはMINISOの1日の販売記録を破る記録を打ち立てたという(中国本土を除く)。
8600平方フィートを超える2階建ての店舗には、人気のIPコレクションが並び、雑貨・家庭用品・化粧品・文房具・ファッション小物など幅広いアイテムを販売している。
MINISOの海外市場GMのVincent Huangは「ニューヨーク・タイムズスクエア、イギリス・オックスフォートストリートのスーパーストアに続き、パリ・シャンゼリゼ通りのオープンは顧客体験を向上させ、世界的なブランド認知を促進する役割を更に強化します」と語った。
(参考:Inside Retail Asia :Miniso opens largest store in Europe
https://insideretail.asia/2024/06/25/miniso-opens-largest-store-in-europe/)
(参考:The Toy Book :Miniso Opens Flagship Store in Paris, Breaks Single-Day Sales Record
https://toybook.com/miniso-paris-flagship-news/)
まとめ
MINISOは様々な疑惑や課題を抱えながらもマーベル・ディズニー、サンリオなどとのライセンス契約による人気キャラクターとのコラボレーションや、新しいコラボ製品の展開を通じ流行のデザインを取り入れながらも、手頃な価格帯で世界中の多くの消費者の支持を集めている。また、世界的にもエンターテイメントの中心地となっている主要な立地に次々と店舗をオープンし、グローバル展開を成功させている。
一方で企業の成長過程での偽装問題をはじめ、透明性とビジネス理念に関する批判も大きく、今後の信頼性向上に向けた取り組みが求められ、いくつかの課題も抱えている。
あたかも日本企業であるかのように偽装するなどもってのほかだが、裏返してみるとそれほどまでに「日本企業」を装いたいのは、そうすることで世界的信用を得る事ができ、価値を見出すことができるという証明なのではないか。
筆者としては、実際にMINISO店舗を見てこれらの商品・品質・価格帯で世界中の消費者に支持されているならば、“本物の”日本企業が日本のオーセンティックなライフスタイル雑貨店を世界に展開しても、そのクオリティに驚きと感動を持って人々に受け入れられるだろう、と思わずにはいられない。