ウクライナ侵攻とアメリカ人
ロシアのウクライナ侵攻がはじまってから3ヶ月が経ちましたが、アメリカ人がロシアのウクライナ侵攻についてどう思っているののでしょうか?メディアに出ているデータと、実際の声を元にアメリカ在住ライターが「アメリカ人が感じるロシアのウクライナ侵攻」について解説いたします。
ウクライナ侵攻とアメリカ人
著者:シアトルgram fellow 土師 恵
公開日:2022年5月30日
アメリカはどちらの味方?
率直にいうと、アメリカではウクライナ支持者が多いです。実はアメリカは2014年から、そして今回の開戦以降も、度重なる多額の資金や武器や医薬品など派兵以外の支援をウクライナにしています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は世界各国に向けてそれぞれの国ごとのオーダーメイドの演説動画を用意していました。
日本に対しては東日本大震災について言及するなど、それぞれの国の人の琴線に触れるような言葉で、資金や物資の支援を求めています。
アメリカでは政治家向けに国会での一度だけではなく、一般大衆向けの歌の祭典、グラミー賞の中でも演説動画を流しました。一般の多くの人々に向けて考えられた演説と、ウクライナ出身アーティストが奏でる歌と音楽。誰の心にも訴えかける演出に筆者も涙せずにはいられませんでした。
思わず支援をしたくなる言葉やタイミング、そして熱量。ゼレンスキー大統領の優秀さはアメリカではかなり評価されています。
口には出すことはそうそうなくとも、特に冷戦時代を経験した年配のアメリカ人は、心のどこかにロシア(旧ソ連)は敵だという気持ちがあるので、一致団結してウクライナを推そう!というムードが強いです。
アメリカはウクライナに派兵すべきか?
アメリカで議論になっている、『アメリカはウクライナに派兵するべきか?』という質問は、テレビやラジオ、ネットをにぎわせています。開戦前から様々なメディアが独自の世論調査を行っています。聞き方によって数値が変わるのですが、メディアの発表するデータから見ると、アメリカ国民全体としては『ウクライナに派兵するべきではない』と答えている人が多いです。
ロシアへの経済制裁はこのまま続けるべきで、バイデン大統領がロシアから原油を輸入しないとの考えを明らかにしたことを多くの国民が支持しています。ウクライナへの武器などの供給も続けるべきだとしています。
ただ、実際にアメリカ人を派兵することに関しては不支持を示すデータが多いです。
その理由の1つが、イラクやアフガニスタン侵攻失敗の過去があり、もうアメリカが世界の紛争や戦争に積極的に介入するべきではないと考える人が多いことです。
もう1つの理由としては、ロシアが核を持っており、アメリカが参戦すると核戦争になってしまう懸念があることです。
ただ、支持する政党によっては若干違った答えも見受けられます。共和党や独立派はウクライナへのアメリカ兵の派兵を支持しない人の方が多く、民主党は派兵を支持する人の方が他の党より多いです。
これはよく言われることですが、景気が悪いとその政権は戦争をしたがったりしますよね。
アメリカは歴史的なインフレなので、戦争をする事で解決したい人も中にはいるとは思いますが、今のところアメリカの国全体としては派兵はしない意向です。
日本のことは意外と知らないアメリカ人
筆者はアメリカの北西部に住んでいます。
現政権の民主党支持者か独立派の多い地域です。
先日近所の奥様達とお茶をしていて、『アメリカはウクライナに派兵するべきだと思う?』といった日本であれば昼下がりのお茶会にはそぐわない内容の話題を出してみました。
アメリカでは家族でも政治の話を結構するので特に嫌な顔をされることもなく普通に話してくれます。
すると、意外にもみんな『派兵するべき』と答えて、メディアのデータと違ってびっくりしました。
『NATOは派兵するべき?』と質問をしたら、『アメリカ人を派兵するよりもまずNATOとしてみんなでウクライナを助けるべき』という答えが返ってきました。その会話の中で興味深いこともがわかったのですが、もしNATOとしてウクライナに派兵するのであれば、日本も同盟国として一緒に行くと思っている人が多いです。筆者は、日本はNATOの加盟国ではなくパートナーシップ国なので、アメリカと共にウクライナに行く可能性は低いこと、そして日本には憲法第9条をはじめとしたいくつかのルールがあるので戦争ができない、武器を支援してはいけない、また、防衛のための自衛隊がいても、戦うための武器や軍隊は持っていない旨を伝えました。
みんなとても驚き、その中の数人は日本は核を持っていると思っていたようで、東日本大震災の時に福島で爆発したのは核爆弾ではなかったのか?と聞かれた筆者もまた驚きました。
彼女達は例えば職業が薬剤師だったり、アメリカでは割と高いレベルの教育も受けています。
国をまたいで人材を雇用する仕事をしていたり国際感覚も備えていそうな人達です。
お互い良好な関係を築いているとはいえ、海を渡った遠い国の日本の防衛事情や憲法第9条までは知られていないものなのですね。
日本では声高に騒がれていたり、当たり前だと思われていることをアメリカで話すと『初めて知ったわ』といわれることも多いです。
まとめ
まず大前提として、筆者は世界が1日でも早く平和になることを願っています。
今回のロシアのウクライナ侵攻の諸々でアメリカビジネスのヒントになりうることといえば、ゼレンスキー大統領のそれぞれの国に合わせた演説と支援の要請度合いでしょうか。人の心を動かす技術とそのタイミングです。あとは、アメリカ人は思ったよりも他の国のことを知りません。もっというと、日本のことを知りません。日米同盟を結んでいる日本の防衛事情などは、アメリカの官僚や軍人レベルの人達は知っているかもしれませんが市民レベルでは知られていません。日本では色々なタイミングであんなに騒がれている憲法第9条を、筆者の友人のアメリカ人達はまったく知りませんでした。つまり、これをビジネスに置き換えるとしたら、もっとアピールすること、知ってもらうことが大切だと感じます。御社の素敵な商品やサービスをもっともっと世に知らしめてアピール社会のアメリカでも更なるご活躍を遂げられますよう、この記事がお役に立てば幸いです。