マレーシア 第17代イブラヒム新国王が即位
ジョホール州の州王であるイブラヒム・イスカンダル王が、1月31日、第17代のマレーシア国王に即位しました。
イブラヒム新国王は1958年11月22日生まれの65歳で、アブドラ・アフマド・シャー前国王の後任となります。
以前この記事でも紹介しましたが、マレーシアは非常に特異な立憲君主制を採っています。
今回はあらためてマレーシアの王政を解説し、新国王の人となりについて紹介します。
マレーシア 第17代イブラヒム新国王が即位
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年3月14日
独立以来17人目の国王
イブラヒム新国王は1957年の独立以来、17人目の国王となります。
即位の当日、新国王は伝統的な衣装に身を包み、金メッキのサーベルを手にクアラルンプールにある王宮(イスタナ・ネガラ)に移動。
アンワル首相や王室関係者、閣僚らが立ち会う中「私はいつでも全力でイスラム教を守り、この国の公正な統治と平和を堅持する」と宣誓し、誓約書に署名しました。
後日、あらためて戴冠式が行われる予定です。
輪番制の王制
マレーシアには13の州があり、そのうち9つの州には各州の世襲制の君主(スルタン)がいます。
その国内9つの州の州王が国王(アゴン)を持ち回りで務め、在位期間は5年です。つまり、マレーシアの国王は5年ごとに変わるのです。
マレーシアは輪番制の王制をしいている、事実上世界で唯一の国なのです。
新国王とはどんな方?
イブラヒム国王はマレーシア国内で最も裕福な人物のひとりであり、彼の家族資産は57億ドル(約8,457億円)とも言われていて、不動産や鉱業、通信、さらにはパーム油などの分野の事業で主要な株主になっています。
非常に熱心な車愛好家としても有名で、300台以上の高級車を所有しています。その中にはヒトラーから贈られたと伝えられる車も含まれています。
ボーイング737を含むプライベートジェット機を保有し、私設軍隊を持つ唯一のサルタン※でもあります。
新国王はマレー系イギリス人の子孫、米国の軍事学校で十分な訓練を受けた陸海空軍士官でもあります。
※サルタン(スルタン):各州ごとにおかれる君主(英語のイスラム教国君主ではない)
革新的で熱心なビジネス志向のリーダー
イブラヒム国王は早くから非常に革新的でビジネス志向が強いサルタンとして知られており、ジョホール州や国に利益をもたらす、巨大インフラの開発を積極的に推進してきました。
彼が推し進めてきたプロジェクトには、先日計画が復活した「クアラルンプール・シンガポール間の高速鉄道(HSR)プロジェクト」、日本の報道でも少し有名になった「フォレストシティ」の開発も含まれています。
政治的安定を望む率直な指導者で「経済を回復させ、マレーシアの繁栄を優先しなければならない」と述べ、野党指導者らによる策動は国民の福祉にとって有害であると主張しており、この数年のマレーシアの政治の不安定について苦言を呈しています。
(参考:楽園がゴーストタウンに マレーシアの「フォレストシティ」
https://global-biz.net/southeast-asia/malaysia/forest-city-report-my/)
(参考:マレーシアとシンガポール、クアラルンプール=シンガポール間の高速鉄道(HSR)計画を撤回
https://global-biz.net/southeast-asia/malaysia/singapore-malaysia-hsr/)
経済復調・発展に絶好の機会
さまざまなビジネスベンチャーに積極的に参画しており、自身がビジネスに強く関わっていることを強調し「州王も他の人たちと同じように生計を立てなければならない。月々の小遣い2万7,000リンギット(約84万円)だけに頼ることはできない」とイブラヒム国王は率直に述べています。
政権交代による政治の不安定時に、国王による大きなリーダーシップが発揮されました
イブラヒム国王が即位したことで、マレーシア国民も政治の分裂が是正されることを期待しており、マレーシア経済が順調に復調し、シンガポールなどの周辺国を巻き込んでさらなる発展を遂げていくことを強く願っています。