シンガポールの都市緑化構想 

シンガポール

シンガポールに着くと、すぐに気づくことがあります。

チャンギ国際空港は、到着フロアに降りると壁一面に植物が飾られていて驚きます。そして隣接する”ジュエル”に入ると、建物の中に巨大な滝が出現するのです。

高層ビルが立ち並ぶ近代的な街に出てみても、豊かな緑が絶妙に都市に溶け込み、未来都市の理想形が目の前に広がっていることに気づきます。

世界に先駆け、都市の緑化を進めてきたシンガポールの足跡について取り上げたいと思います。

シンガポールの都市緑化構想  

   著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2025年 7月27日

世界でも最も高い緑化度

シンガポールの都市緑化度は、都市部の緑地の多さを示す「グリーンビュー指数」の国際比較調査で、都市の中で最も高い水準の29.3%を記録しています。国土の約1/3が緑地で、近代的な高層ビルが立ち並ぶエリアでも常に視界に緑が入ってくるのが特徴です。

「ガーデン・シティ」

シンガポールの建国の父であるリー・クアンユー氏の”ガーデン・シティ”という構想と、それを推し進める彼の強いリーダーシップがあったからこそ、現在の美しく整備された”ガーデン・シティ”シンガポールがあります。

特に観光資源もない中で、世界中から、年間1,500万以上の観光客が訪れており、リー氏の”最も低コスト”な国の改善方法という恐るべき先見力に驚かされます。

「グリーン・コリドー構想」

”グリーン・コリドー構想”は、持続可能な都市計画の一環として、都市と自然を融合させる取り組みです。

シンガポールは「ガーデン・シティ」から発展して「シティ・イン・ア・ガーデン(庭園の中の都市)」というビジョンを掲げて都市緑化を進めています。

その中で、都市内に「自然回廊(グリーン・コリドー)」を設けて、生態系を保全しながら市民が自然に触れられる環境を提供する政策を推し進めています。

都市緑化の推進

グリーン・コリドー構想の具体例としてはレール・コリドーが挙げられます。

これは、旧マレー鉄道の跡地24kmを活用し、シンガポール島を南北に結ぶ緑の回廊として再生されました。歩行者やサイクリストが自然の中を移動できる空間として設計され、都市の中で生態系を維持する役割も見事に果たしています。

観光名所としても有名なガーデンズ・バイ・ザ・ベイは、エネルギー効率の高い植物園として設計され、スーパーツリーが発電や水資源の再利用を行いながら、夜間には美しいライトアップを提供していて、都市緑化の象徴となっています。

グリーンビルディング

2030年までに建築物の80%を環境に配慮したグリーンビルディングへ変える目標が掲げられていて、ビルの屋上や壁面の緑化用に政府から助成金も出ています。

また”ワン・ミリオン・ツリー計画”も推進中で、これは2030年までに100万本の木を国内に植樹し、生物多様性の回復と気候変動への対策に貢献する計画です。これまでにすでに約50万本が植えられ、市民参加型の活動としても広がりも見せています。

未来への投資──サステナブルシティの先駆け

シンガポールの都市計画は、経済成長と環境保護を両立させる点で世界中から注目されています。

街全体の緑地面積は約47%に達し、市民がいつでも自然を感じられる環境が整っていて、平均気温は30℃前後と熱帯気候であるにもかかわらず、木陰を歩くと、温度が少し和らいでいることに気づき、緑がもたらすヒートアイランド現象の緩和効果にも気づかされます。紹介した取り組みは、「美しい緑の空間を残しつつ、未来へつなぐ」というシンガポールの都市緑化計画を物語っています。

Malay Dragon

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マレーシア・シンガポール在住のgramフェロー 経済上から時事ネタ、現地のマナーまで幅広く執筆。

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