入国を拒否される旅行者の割合が増加

先日の国会答弁でスン内務兼社会・家庭開発国務大臣が、2023年5月のチャンギ空港での外国人向けの入国審査時の自動化レーン導入以来、シンガポールへの入国を拒否される旅行者の割合が増加したと明らかにしました。
私も数ヶ月に1回は出張でシンガポールに訪れていて、この自動化レーンで入国審査の時間が短縮され恩恵を受けていますが、便利なだけではないようです。
今回はこの記事を紹介しながら、シンガポールの観光政策について解説します。
入国を拒否される旅行者の割合が増加
著者:シンガポールgramフェロー Malay Dragon
公開日:2024年 1月31日
1カ月に約2,500人
スン大臣の答弁によると、現在1ヶ月に約2,500人の訪問者がシンガポールの入国審査で入国を拒否されているとのことです。
スン大臣は、シンガポール移民管理局が旅行者の入国前にデータ分析とリスクの評価を行っていて、それによりリスクの高い旅行者をより厳しく審査できているようでと述べています。
過激派説教師の不法入国
この国会答弁が行われた経緯は、先日のシンガポールの「ナショナルデー」の際に、バングラデシュの過激派説教師であるハムザ氏容疑者が不法入国を果たした事件がきっかけになっています。
ハムザ容疑者は内務省の監視リストに載っていたものの、別の名前のパスポートを使ってシンガポール入国ビザを申請し入国し、無許可でシンガポールの寮で移民労働者に対して説教していていました。
自動レーンの設置加速
2023年の5月以降、シンガポールに到着するすべての外国人は、国籍を問わずチャンギ空港の自動化レーンを利用して入国審査を受けることができるようになりました。
シンガポール移民局は、2026年までにシンガポール全土の検問所に約800の自動レーンを設置する計画で、入国手続きの自動化が進めばさらに不審な旅行者を見つけることが可能になると答弁しています。
観光の重要性
シンガポールは観光業を重要な経済成長の柱と位置づけていて、国家のGDP(国内総生産)に大きく貢献しています。
コロナ禍前の2019年には、外国人旅行者は約1,970万人に達し、約275億シンガポールドル(約3兆円)の観光収入を生み出しました。シンガポールのGDPの約4%を占めており、シンガポールの経済にとっては重要な収入源となっています。
訪問者数の増加に対応するために政府は入国手続きを効率化する必要に迫られていて、これに対応するため入国管理プロセスの自動化が進められています。
観光業の競争力を高める
シンガポールは「スマートシティ」や「持続可能な観光」の推進を通じて、観光業の競争力をさらに高めていく計画です。
具体的な政策としては以下のものがあります。
・ チャンギ国際空港の第5ターミナル建設や、都市全体の交通システムの整備などの観光インフラの整備
・ セントーサ島とブラニ島を連携させて、リゾート開発やレクリエーション施設を整備する計画などの新たな観光資源の開発
・ AIやIoTといったデジタル技術を駆使して、個々の旅行者にパーソナライズされた体験を提供するシステムの導入
・ 持続可能な観光の推進を中心に展開している「グリーン・プラン 2030」の一環として、持続可能な観光施設やエコツーリズムの推進、さらにクリーンエネルギーを利用したホテルや交通機関の整備
観光業の拡大と国境管理のバランス
シンガポールは、今後も観光業の拡大と国境管理のバランスを巧みに取り続けるでしょう。
今後も国際会議や大規模イベントの増加が見込まれており、シンガポールは引き続き観光業の拡大を支えるためのインフラ整備を進めていくでしょう。