海外注目企業の魅力を徹底調査2022:拼多多(PinDuoDuo)

中国

アリババと京東グループが独占する中国のEC業界において台頭してきた新星、拼多多(PinDuoDuo)。
2022年には年間ユーザー数が8億人になり、アリババをも超えてしまう勢いです。
2015年誕生という遅いスタートにも関わらず、「ソーシャルEC」でわずか7年でアリババと京東が主力の中国EC市場に新たな立ち位置を確立し、トップを狙う拼多多(PinDuoDuo)を解説いたします。
中国で話題になっているソーシャルECとはいったい何でしょうか?

海外注目企業の魅力を徹底調査2022:EC界の新星 拼多多(PDD)

   著者:gramフェロー
公開日:2022年3月28日

勢いが止まらないECサイト「拼多多(PinDuoDuo)」

アリババと京東(JD)グループといえば、誰もが知るEC業界における揺るぎない覇者。そんな京東グループを追い抜き、現在中国EC業界の最大手アリババと並ぶECサイトがあります。 
                                  
その名は、拼多多(PinDuoDuo)。

2015年の創始から約3年という時間でナスダックに上場し、わずか7年でアリババと京東が牛耳っていたEC業界に新たな立ち位置を確立した猛者です。

2021年度時点での年間利用者は8.2億人であり、アリババが同時期に発表した8.1億人を上回りました。
元々2位だったJDグループの2021年の年間利用者も5億人だったことを考えると、
その勢いには凄まじいものがあります。

中国のEC業界は世界でも先を行っている部分が多くありますので、今回は拼多多(PinDuoDuo)をもとに、
中国のEC市場についても見ていこうと思います。

誕生からなんと約3年でナスダックに上場を果たした拼多多
https://www.sohu.com/a/326925322_100272654

ソーシャルECとは?

拼多多appの画面

冒頭でも述べたとおり、拼多多(PinDuoDuo)はECサイトですが、
その大きな特徴が「ソーシャルEC」であるということです。

近頃中国でよく聞く、ソーシャルECとはいったい何でしょうか。
まずはこれについてご説明させていただきます。

皆さんの考えるECといえば、日本では楽天やAmazonが思い浮かぶかと思います。
サイト上で買い物をして、そこで完結するのものが普通のECです。

これに対して、買い物をする際、SNSを巻き込む、またはSNSがECを巻き込むものがソーシャルECです。
EC→SNSもあれば、SNSからECもある。

様々なスタイルのソーシャルECがありますが、購入と共有、この二つが同時に行われるところが、ソーシャルEC最大の特徴です。

中国では、SNSの動画シェアアプリやブログサイトからのECへの勧誘は日常茶飯事になっています。またEC→SNSへのシェアも日々行われています。

日本に住んでいる方からすれば、なんだそれは、と思われるでしょう。
前者は理解できても、後者には何のメリットがあって自分の購入についてシェアするんだ、と不思議になりますよね。

実は、拼多多はまさしくその後者のソーシャルECとして発展してきました。
以下の段落ではその仕組みを詳しくご説明していきたいと思います。

ソーシャルECのゲーム式勧誘方式

拼多多(PinDuoDuo)は、ゲーム式ソーシャルECです。
アプリを利用することでゲームをプレイする事ができ、数え切れないほどゲームがありますが以下では、次のものをご紹介していきたいと思います。

・人を集めて、商品を安くする共同購入
・知人を勧誘することで、無料券をもらえる
・育成ゲームで商品を無料で獲得

ソーシャルEC「拼多多(PinDuoDuo)」 

拼多多共同購入の仕組み
赤矢印で示す部分

拼多多(PinDuoDuo)では、利用者が買い物をする際、アプリの右下に「一緒に買う」というボタンが選択できます。

「一緒に買う」を選択すると値段がさらに安くなります。拼多多は同じ商品を購入したいと思っている利用者を集め、その注文をまとめてメーカーに注文することで価格を下げています。

ここでの小さなポイントは、仲介業者を通さずにメーカーと直接取引することによって、値段がさらに安くなっていることです(上図を参照)。


使い手も運営サイドも双方がwin-winなこの仕組み。
拼多多最大の特徴だと言えます。

無料券獲得の仕組み

定期的に(かなり頻繁に)右の写真のような無料券が配布されます。

こちらは100元の無料券です。
日本円にすると約1800円もあるチケットが貰えたら嬉しいですよね。スーパー1回分の買い物が出来るくらいの価値はあります。

しかしこのチケット、すぐに使えるわけではありません。

よく見ると、あと1.47元足りません(黄色の部分)。
実は、知人と協力することで初めて無料券が貰えます。

知人に拼多多(PinDuoDuo)のメッセージをシェアし、助けてもらうことで、
チケットが有効になります。

1.47元だと100元まであともう少しなので、100元ゲットする為に宣伝するような仕組みになっているのです。

育成ゲームで無料で商品をゲット

育成ゲーム「多多牧場」

こちらは「多多牧場」という名の育成ゲームです。

左の画面中にある牛を成牛まで育てることで、右の画面に映し出された商品を無料で貰うことができます。

牛を育てる為には、一定量の飼料が必要になります。一定間隔に配布される飼料を与えたり、共同購入に参加することで貰えるボーナス飼料を与えたりすることができます。

このゲームには、他のゲームと同様、共同購入を促進するという目的と
同時に、実は一人当たりのアプリ滞在時間を延ばす狙いがあります。

このゲームに参加することにより、毎日のログインや、定期的なアプリのチェックへのモチベーションができます。
これによって、拼多多は拼多多アプリに対する顧客ロイヤリティを上げることに成功しています。

また、アプリに滞在する時間が長くなることで、予想外の購買行動が生じる確率も高くなります。

共同購入による宣伝費の削減

Tencentの出資を受ける拼多多
シェアも支払いもTencent系列

上記で紹介したゲームの共通点には、共同購入というソーシャル的な要素が強いことが伺えます。
実はこの共同購入によって拼多多が得られる大きなメリットがあります。

それはズバリ宣伝費の削減です。

利用者はSNSを通して、知り合いに購買勧誘をするような仕組みになっています。利用者から利用者へと勧誘が広がるので、広告費の削減が見込めます。その効果は、以下の比較からも顕著に伺えます。

2017年
アリババとJDグループの顧客獲得単価がそれぞれ310元、225元であったのに対し、拼多多(PinDuoDuo)はわずか7元。

2021年
アリババとJDグループの顧客獲得単価がそれぞれ405元(7300円)、298元(5400円)であったのに対し、
拼多多(PinDuoDuo)は180元(3200円)。

利用者数はECサイトのGMV(流通総額)に直接影響を与えるので、少ない顧客獲得単価で多くの顧客獲得に成功しているのは拼多多の大きな強みです。一見、宣伝費くらいと思う方もいるかもしれません。
しかし、約8億人の利用者を抱えるアリババが、一人当たりの獲得単価に7千円前後をかけていることを想像してみてください。

多くのECサイトが顧客獲得の為の宣伝費に悩まされている中、拼多多はこうしてこの問題を最小限に抑えているのです。(PinDuoDuo)

中国市場とターゲット層

以上、拼多多が8億人の利用者を手に入れるまでの道のりを説明してきました。

しかし、上記の方法はあくまで宣伝方法であるだけで、拼多多がEC界に切り込んだきっかけはまた別にあります。
競争ポイントがゲーム感覚のソーシャルECというだけでは、ここまで登り詰めることは出来なかったでしょう。

拼多多がEC界における不動の地位を築いたもう一つの要因は、的確なターゲティングです。
今さらターゲティング・・・と思う方もいるでしょう。
しかし、拼多多のターゲティングは日本で言う老若男女といったような分類の仕方によるものではありません。
それは、所得と居住地区による分類です。

中国では一線から五線と都市を区分することがある
https://zhuanlan.zhihu.com/p/90920884

国土が広い中国では、都市によって所得が全く異なります。

都市を人口や経済力に基づいて一線から五線まで区分しており、北京や上海などを一線都市と呼ぶことがあります。

各都市の成長によってその区分が変わってきたりしますが、
アリババとJDグループ、美団は経済力のある第一線都市と
第二線都市に目をつけて発展を遂げてきました。

ここで、中国が日本と異なるところが、国内での所得の格差が
大きい、ということです。
三線以下の都市には総人口が10億人近く存在するにも関わらず、経済的な理由から多くの企業は第一都市と第二都市に集中していました。

その三線以下の都市に目をつけたEC企業が、拼多多だったのです。

そのタイミングはちょうど三線以下の都市にスマートフォンが完全に広まった時期と重なり、Tencentの出資を受ける拼多多は、ゲーム感覚的な宣伝方法によってWechatを通じて三線以下の都市の利用者を一気に獲得することに成功しました。

これからのEC

拼多多には創始当初から力を入れている事業があります。
それはC2M事業です(Consumer to Manufacturer)。

いくつか前の段落で少し触れましたが、拼多多は多くの場合、仲介業者を通さずにメーカーと直接取引をしています。その場合、仲介がない分商品が安くなるメリットがあります。
また、大手EC企業は顧客の注文履歴から膨大な消費者データを所有しています。AIによって、消費者の嗜好を分析し、未来の流行を読むことも出来ます。

そこで、EC企業がメーカーに直接話を持ちかけ、メーカーとの直接的な協力関係の構築とメーカーのシステムのAI化を進める、というのが中国のEC業界の次の主流です。

メーカーのシステムのAI化によって、メーカーはEC企業から提供される信頼性のあるデータに基づいて製造計画を立てることができるので、小規模でかつ柔軟な生産が可能になります。
また、EC企業は独自で分析した消費者のニーズを反映させたオリジナル商品をメーカーに発注し、成功率の高い新ブランドを作り続けることが可能になります。

EC企業にとってのC2Mとは、上記のように顧客のニーズを直接メーカーに繋げる(Consumer to Manufacturer)ことです。
この仕組みは日本ではまだ馴染みが薄いですが、中国では人口が多いが故にC2Mは物流システムにおける決定的な転換点となり、新しいニーズを反映させる市場として大変注目されています。

中国「流量」という意味

実は中国では、大勢の人が拼多多を利用しているのにも関わらず、悪い口コミが絶えません。何故なら、価格が安い反面、品質が保証されていない商品も多く販売されているからです。さらに、営業や事業投資に力を入れてきた拼多多は、赤字の年がほとんどです。破格の価格で低利益の拼多多のビジネスモデルに疑問を抱く人も多いです。

負の評判を背負いつつ、それでも急成長してきた拼多多。

中国には「流量」という言葉があります。企業と接点を持つユーザーの数、それがこの言葉の意味です。
まず、流量を獲得し、そこからいかに利益に転換していくかを考えるのが中国企業の常です。

最初は破格のキャンペーンや大々的な宣伝を行い、ユーザーを獲得する。そしてそこから新しいサービスを付加していき、利益の出るビジネスモデルを作る。
それが拼多多の本当の狙いです。
最初は赤字でも、後からゲーム事業を始めるのもよし、決済事業を始めるのもよし、とりあえず最初に流量を確保することを最優先にしています。
少し日本のPaypayを彷彿とさせませんか。

まとめ

第4回では、EC業界の新星 拼多多(PinDuoDuo)を見ていくと同時に、これからの中国のEC業界についても少し触れてみました。

以下、中国においてEコマースをする上で大切になってくるポイントをいくつか挙げてみます:

三線四線線都市: 潜在的な顧客層であり、拼多多に習って多くの企業が参戦する予感
C2M
:       EC業界の最近の常識、中国の物流の転換点
ライブコマース
:  中国では大前提となる、ライブ配信によるオンライン販促。拼多多でも例外なく行われている
UXデザイン:    全てのサービスをアプリ上で完結する中国では、UIUXのデザインも常識。例えば拼多多には買い物カゴの機能はなく、直感的なデザイン設計が行われている

少し情報が多くなってしまいましたが、いかがでしょうか。
こう見てみると、拼多多には新ECの全ての要素が詰まっているようにも感じます。

実は拼多多には、今回文中でご紹介した点以外にも多くの面白い仕組みがあります。
日本でも拼多多のアプリをダウンロードできるので、デザインや雰囲気を体験してみるのも楽しいと思います。

引用元・参考リンク

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1700987788665165656&wfr=spider&for=pc 
https://36kr.com/p/1326223462996228 
https://www.dyhzdl.cn/k/doc/edc5a04abcd5b9f3f90f76c66137ee06eef94e78.html 
https://new.qq.com/omn/20211208/20211208A0C9GJ00.html 
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1681663336329470088&wfr=spider&for=pc 

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