中国で流行している貧乏セットとは 新しい形の貧乏セットが話題に?
ここ最近、不景気が続く中国で「貧乏セット」が流行している。ファーストフードチェーンを皮切りに多くの飲食店が貧乏セット市場に参入し、SNSでは貧乏セット関連の投稿数が増加している。
本記事では、そもそも「貧乏セット」とは何か、新型貧乏セットについて、貧乏セットがトレンドとなっている背景について紹介する。
中国で流行している貧乏セットとは 新しい形の貧乏セットが話題に?
著者:上海gramフェロー 米久 熊代
公開日:2024年11月26日
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中国で話題の「貧乏セット」とは
「貧乏セット」とは、消費者がお得と感じるものや、コストパフォーマンスが高い低価格の商品やメニューのことを指す。中国の多くの飲食店では、この貧乏セットを提供する店が増えているのだ。
北京市を中心に展開している外食チェーン「南城香」では、朝食がなんと3元(約60円)で食べることができる。その内容は、3種類のお粥やスープ、豆乳、牛乳、ジュースがセルフで食べ放題だという。その他にも中国の揚げパン(油条)は2.5元(約50円)、中華まん(包子)は3元と平均価格ではあるが、お粥などの食べ放題が安く、追加でオーダーしても安価で美味しい朝食を綺麗な店内で味わうことができ、顧客の満足度は高い。
中国のマクドナルドでは、ハンバーガーと飲み物またはデザートを自分の好みに合わせて組み合わせるセットを13.9元(約280円)で提供。バーガーキングは同様のセットで9.9元(約200円)。ケンタッキーは毎週木曜日に9.9元(約200円)でチキンなどを食べることができる。
こうした中国で人気のファーストフード店を中心に、貧乏セットは盛り上がりをみせ、多くの若者や低所得者層を魅了しSNSで拡散されている。
中国で新型の貧乏セットが登場?
飲食店が提供する貧乏セットではなく、「お子様セットのコスパが高い!新しい形の貧乏セットだ」とSNSの投稿が話題となっている。
物価の高い上海で、水餃子とグリルチキン、茹でブロッコリーやトマトのサラダがセットで9.9元(約200円)と激安メニューな訳はお子様セットだからだ。大人がこのお子様セットを注文し新型貧乏セットとして注文している。
吉野家のお子様セットは12.9元で鶏のから揚げ、牛丼、レンコンやブロッコリーなどのサラダ、茶碗蒸し、ドリンクのセットとなっている。女性なら大人が食べても満腹になる量にもかかわらず、お子様セットのため激安でランチを味わうことができるのだ。
これらのお子様セットを大人が食べることに対し、小食や節約をしたい客にはとても向いているというコメントがある一方、多くの大人がお子様セットを注文するようになった場合、企業は価格を引き上げたり、ルールを設定したり、あるいは販売を停止するのではないか、本当にお子様セットを必要とする人たちに影響が及ぶ可能性があるのではとマイナスなコメントもあった。
貧乏セットが流行している背景
貧乏セットが流行した背景には、輸出の減少や不動産市場の低迷、コロナ禍を経験したことによる消費者の理性消費などがある。さまざまな要因が重なり将来への不安が募ったことで節約志向が強まった。
ここ数年で中国から撤退・縮小する日本企業が相次いでいる。とはいっても、中国は多くの分野で将来性のあるマーケットであると考える日本人も多いことだろう。
しかし、中国人だけは自国の現状を理解しており、中国経済が回復することはない、これ以上の発展は見込めないと感じている人が多い。将来に対しての希望が薄く、ブランド物や電化製品を爆買いしていた時代は終わりを告げ、リスクに備えて貯蓄する人が増えたように見受けられる(筆者個人意見)。
2023年の可処分所得の調査によると、中間層は増えている一方で、低所得者層と高所得者層の所得の幅は約10倍ほどあり格差がでている。格差が広がる中国で低所得者層は格安の商品を求めている。こうした背景から貧乏セットの流行が広がっているのだ。
まとめ
コスパ重視をする一方で、中間層が増えていることから生活に豊かさを求め旅行を楽しむ人や必要なものに対しては消費を惜しまない若者も少なくない。
20代の中国人の友人が今年の国慶節を利用して日本へ旅行する際、SONYの40万円するカメラを購入する予定だと話していた。30代の友人は日本でブランドのバッグを買うと張り切っていた。
2024年第1四半期(1~3月)の全国1人当たりの平均可処分所得は、前年同期比6.2%増の1万1,539元(約24万6,000円)。
2024年上半期(1~6月)の全国1人当たりの平均可処分所得は、前年同期比5.4%増の2万733元(約45万1200円)というデータがでている。
(参考:NNA ASIA https://www.nna.jp/news/2647709)
貧乏セットの流行が一過性のものなのか、それとも継続して続くのか今後の経済動向を注視したい。