マレーシア 国産ブランドEVが首位を獲得

マレーシアの国民的自動車メーカー、プロトンが長らく待ち望んでいた電気自動車(EV)「e.Mas7」を、2024年12月に発売したことは以前お伝えしましたが、道路交通局(JPJ)の最新の車両登録データによると、2025年1月にマレーシアで最も人気のあるEVとして浮上したことがわかり、市場を驚かせています。
そこで今回は国産ブランドEVが首位を獲得したことを紹介しつつ、EVがマレーシアの産業にどのような影響を与える可能性について深掘りします。

マレーシア 国産ブランドEVが首位を獲得
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2023年7月8日
国産EVが躍進

2025年1月、マレーシアでは合計1,691台のEVが登録され、 2024年1月(登録台数1,403台)と比較して20.5%増加しました。
2月には、「e.Mas7(イーマス)」の1モデル目は580台納車され、昨年12月の発売から累計納車台数は1,000台を突破し、これまでの予約台数は4,500台を超えることがわかりました。
自動車業界は衰退傾向
マレーシアの車両登録総数は2025年1月は53,930台と、2024年1月の70,186台から23.2%減少したにもかかわらず、EVへの関心が高まっていいます。
2024年1月と2025年1月のデータを比較すると、ガソリン車の登録台数は23.7%減少し(2024年1月:61,753台、2025年1月:47,093台)、ディーゼル車の登録台数は44.3%減少しました(2024年1月:2,525台、2025年1月:4,533台)。一方、ガソリンハイブリッド車は7%の微増を示しています(2024年1月:2,101台、2025年1月:2,249台)。
BYDを抜く
プロトン初のEV「e.Mas7(イーマス)」は最も人気のあるEVモデルとなりましたが、第2位にはBYDの Sealion7が151台で入り、BYD M6が第3位、BYD Atto3が第4位と、BYDの強さは健在ですが、ついにその牙城を国産EVが崩し、業界に衝撃を与えています。
EVの進展と産業構造の変化
マレーシアの自動車産業は、プロトン(Proton) や ペロドゥア(Perodua) などの国産ブランドを中心に発展し、国内経済や雇用に大きな影響を与えています。これまでの産業構造は内燃機関(ICE)車を中心としたサプライチェーン に依存していましたが、EVの進展によって以下のような変化が予想されます。
①サプライチェーンの再構築
EVは従来のガソリン車と比較して、必要な部品の種類が大幅に異なります。EV化が進むことで、マレーシアの自動車産業のサプライチェーンも変革を迫られると予測されていますが、現在マレーシアはEVバッテリーの製造基盤を持っておらず、多くを輸入に頼っているため、今後はバッテリー関連産業が新たな成長分野になる可能性が高いと見られています。
②半導体の需要増加
EVはより多くの半導体チップを搭載するため、既に半導体製造でASEAN地域の重要拠点となっているマレーシアは、EVの進展により半導体産業のさらなる成長が期待されています。
③雇用への影響
EVの製造工程はガソリン車に比べてシンプルで、組み立て工程に必要な部品点数も少なくなるため、従来の自動車産業における雇用が減少する懸念があります。ただ、単純な組み立て作業の仕事は減少しても、新技術分野に対応できる高度なスキルを持つ労働者の需要は増加するとみられています。
国際競争力の向上
政府はEVの普及を促進するため、税制優遇措置などさまざまな政策を導入しています。政府が積極的にEVシフトを推進することで、産業構造の変化をスムーズに進める可能性が高いです。今後、政府の支援と民間企業の投資次第では、マレーシアがEV産業でASEAN内の競争力を強める可能性は高いとされています。