シンガポール流のお盆!ゴーストマンス(Ghost Month)とハングリー・ゴースト(Hungry Ghost)

シンガポール

「中元節、鬼節」などと呼ばれるシンガポールのお盆(Ghost Month)が、旧暦の7月(2022年は8月12日から22日まで)行われます。
日本のお盆に当たるこの祭りは、地獄と地上を結ぶ地獄の大門が開かれ、親縁がいない死者の霊が、地上に降りてくると考えられています。
中国語では縁者のいない魂のことを「餓鬼(飢えている霊)」と呼び、英訳では「Hungry Ghost」となります。
シンガポールの人口の70%以上を占める中国系のシンガポール人は、「Hungry Ghost Festival(ハングリー・ゴースト・フェスティバル)」をお祝いします。
そこで今回の記事では、「Hungry Ghost Festival」について解説します。

シンガポールのお盆?ゴーストマンス

   著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon 
公開日:2022年7月17日

供養の仕方

「Hungry Ghost」を鎮めるために、道端に食べものやろうそく、お線香などをお供えしてお祈りします。ホーカー(シンガポールの屋台の飲食店)やHDB(シンガポールの公共住宅)の外には大きなドラム缶が設置され、「地獄の金」とよばれる紙でできたお金や車などを燃やして天に届けます。その周りでは大きなお線香を焚き、中華蒸しパンやフルーツなどをお供えします。
人々はそれを蹴飛ばしたり、踏みつけたり、またがないように歩き、敬虔な気持ちを持って通り過ぎます。
供養されずに寂しい想いをしている死者の霊はお腹がすいているので、無視をすればいたずらをするといわれており、いたずらをされないように、死者の霊におもてなしをしているのです。
この時期にはスーパーや地元の店でたくさんのHungry Ghost用のグッズが販売されています。中でも注目すべきは紙製のお金で、よく見ると「The Hell Bank Corporation(あの世銀行)」と書いてあります。
また、死者の魂を弔うために「ゲタイ」と呼ばれる、歌やダンスや京劇のようなものが仮設舞台で開催されます。
会場の座席最前列は供養する霊たちの特等席として空けてあるので、うっかり座ってしまわないように注意しましょう。

「Hungry Ghost」期間中にやってはいけないこと

この「Hungry Ghost」の期間中には、やってはいけない忌避事項がいくつかありますので、代表的なものを紹介します。

1.ご飯にお箸をさす(日本と同じですね)
2.夜に服を干す (霊が干してある服を着て家の中に入って来てしまうそうです)
3.水際に近づく(日本と同じで、溺死した霊に引きずり込まれてしまうので)
4.虫を殺す (挨拶に来た霊かもしれない やはり日本と同じような風習)
5.夜遅くまでの外出 (あちらの世界に連れて行かれてしまう)
6.家の中で傘をさす(霊を家の中へ呼び込んでしまうそう)
7.Hungry Ghost用のお供えを踏む、またぐ(うっかりに気を付けましょう)
8.不動産や車の購入
9.引っ越し(霊とともに新生活を始めていくことになるので)
10.結婚(結婚を失敗に陥れられるので)
11.旅行
12.人の悪口を言う

筆者が駐在初期のころ、店舗出店がちょうど「Hungry Ghost」の時期と重なり中華系の人や取引先の方から強くいさめられ、出店について日本の本社と改めて相談した覚えがあります。

様変わり

最近では「ゲタイ」もまったく様変わりし、LEDでステージを華やかに装飾したり、若い演者たちが、伝統的な歌だけでなく英語や中国語のPOPソングを歌ったりしています。やはり伝統的な行事も時の流れとともに変化しているようです。
この期間にシンガポールに行く機会があれば、街中は若干煙っぽいですが、日本の都会では薄れてしまった古き伝統や習慣を学び、思いおこすいい機会になると思います。
タブー事項をきちんと守って、シンガポール特有の伝統や習慣を学ぶのもまたいいのではないでしょうか。


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