渡航予定者注意!シンガポールのデング熱流行について
デング熱は蚊に刺されることによって感染する疾患です。
急激な発熱に始まる発疹、頭痛、関節痛、はき気やおう吐などの症状が見られ、通常、発症後2~7日で解熱します。
シンガポールではデング熱の流行期は例年6月から10月です。今年は、例年よりも異常に早くデング熱の流行が始まっており、”緊急事態”と位置付けて警戒を強めています。
そこで今回の記事では、シンガポールのデング熱の流行について説明します。
渡航者注意!シンガポールのデング熱流行について
著者:マレーシアgramフェロー Malay Dragon
公開日:2022年6月15日
デング熱の発生状況
今年のデング熱の発生件数は、シンガポール保健省によると、6月3日までに12,000例を超え、昨年1年間に報告された5258例を大幅に上回っており、そのうちおよそ10%が入院を必要としたと報告されています。
しかもこれは、例年デング熱のピークが始まる6月1日より前の数字で、年間の発生件数が過去最大を記録した2020年よりも早いペースで増加しており、国家環境庁(NEA)は、家庭や職場等において予防策に取り組むよう呼びかけています。
NEA職員により住居等への立入検査が行われており、蚊を発生させている状況が認められた場合、処罰の対象となっています。
専門家や医師は、今年は症例数が記録的な水準に達する可能性もあると予想しており、現場を視察したシンガポールのタン内相は「症例数が確実に急増している」と述べ、「緊急に対応しなければならない非常事態の段階にある」との認識を示しました。
流行の原因
専門家は流行の原因は3つあるとしています。
まず1つ目は、シンガポールを含む世界で流行しているデング熱ウイルス(DENV1-4)には4つの異なる血清型があり、現在流行している型がこれまでシンガポールで流行することが少なかったこと。
2つ目は蚊が増殖傾向にあること。
3つ目は、未だ在宅勤務のケースが多いため、自宅で仕事中に蚊に刺されてしまう人が増えていることです。 (出所:国家保健省HP)
また、今年のデング熱流行は、このところの異常気象によって事態が悪化しました。ほかの国でも猛暑や雷雨が長引く傾向にあり、シンガポールと同じ問題に見舞われる恐れがあるとされます。
デング熱の予防方法
デング熱の特効薬は現在のところまだありません。
ですから、正しく予防することが重要になってきます。
まずは住環境の予防策で
●ベランダの植木鉢の下にお皿を置かない(水たまりの原因となるため)
●ベランダのサッシやキッチンの水まわりなどに古い水が溜まらないように清潔にしておく
●家の中の花瓶の水は定期的に入れ替える
●室内の暗い死角に1日に何度か蚊よけスプレーを噴射する
などと、 シンガポール国家環境庁は上記の対策を徹底するよう呼びかけています。
また、外出時にも長袖や長ズボンを履くなどしてなるべく肌を覆うように心がけ、虫除けスプレーを全身に塗布するなどの対策も有効です。
最新の発生地域の把握
シンガポールでは、国家環境庁のHPから現在発生しているデング熱のクラスターを確認することができます。
また、アプリの「myENV」は、シンガポール全土のリアルタイムの雨雲レーダーをはじめ、大気汚染の状況や蚊の多発地域 (報告されたデング熱のクラスターに基づく) の最新状況を一目で見ることができ、事前に対策をするのにとても役立ちます。
世界にとっても不吉な予兆
専門家は、今回のシンガポールでのデング熱の大流行は、世界にとっても危惧すべきことだと警鐘を鳴らしています。気候変動の影響で、今後はこうした流行の頻度が増し、感染が一層拡大する事態が予想されると危惧しています。
シンガポール滞在中には十二分に対策をして、帰国後、発熱等体調に異常がある場合は、早めに近くの医療機関を受診しましょう。検査ができる医療機関については国立感染症研究所の「蚊媒介感染症の診療ガイドライン第3版」を参考にして下さい。
また、帰国時にデング熱が疑われて検疫所で検査の必要があると判断された場合には、検査を受けることができます。
デング熱をむやみに恐れずにしっかりと理解し、感染対策をとってシンガポール滞在をお楽しみください。