「ミスも変更も可能!」エストニアで人気のオンライン投票システムの特徴とは?
過去の記事で触れたように、エストニアの選挙では投票所に行かずともパソコンから投票できる。近年、海外ではインターネットを介したオンライン投票を行う地域が多数出てきているが、その先駆けとなったのはエストニアである。そんなIT先進国におけるオンライン投票の方法や現状などを紹介する。
エストニア:投票所に行かなくてもスマホで解決!オンライン投票を世界で初めて可能にした国
著者:エストニアgram fellow さえきあき
公開日:2023年4月1日
オンライン投票の普及
最初にオンライン投票が行われたのは今から18年も前、2005年だった。この試験的な投票は全国的な選挙ではなく地方選挙で行われた。当時の投票方法の内訳は、全体のわずか2%がネット投票、残りの98%が従来の紙での投票だった。
2007年の総選挙では、世界で初めて国家規模でのオンライン投票を可能にした。しかしながら、そのオンライン投票の票数割合は全体の5%で、地域レベルの投票より割合は上昇したものの、施策に効果があるのか不明な状態だった。
その後システムのアップデートなどを継続して行い、年数が経つにつれオンライン投票をする人の割合が増加した。2019年の欧州議会選挙では、全体の約半数にあたる47%がオンライン投票という結果になった。
(画像引用元:SMARTMATIC Estonia: The world’s longest standing, most advanced internet voting solution – Smartmatic
https://www.smartmatic.com/case-studies/article/estonia-the-worlds-longest-standing-most-advanced-internet-voting-solution/
)
所要時間3分の投票
手持ちのインターネット機器からオンライン投票するためには、National ID(マイナンバーのようなもの)か、Mobile IDが必要である。Mobile IDはスマホが身分証明となるようなシステムのことで、携帯ショップなどで特別なSIMカードを購入し設定やアプリのダウンロードを行うと、手持ちのスマホが身分証明に使えるようになる。
これら2通りの身分証明方法を使って投票サイトにログインし、そこからは候補者を選んでいくだけだ。ものの3分で投票完了となる。
ネットから投票を行った場合、期限までは何回でも投票先を変えられる。そのため、誤タップ等で投票予定だった政党や候補者とは違うものを選択してしまったというオンライン投票特有のミスのリカバリーも可能である。
2023年の総選挙の様子
画像は、3/5に行われた総選挙における、ネット投票が全体の票数に占める割合だ。301495票が紙、オンラインが313514票と、わずかにオンラインによる投票数が多いが、内訳はほぼ半々である。
ネット投票は直接投票よりも1日早く締め切られるため、3/4時点に筆者がサイトで確認した時はオンライン投票が60%、紙での投票が40%程度だったが選挙終了時にはオンラインも紙もほぼ同数になった。投票最終日の駆け込み投票の影響だろう。
(画像引用元:Valimised https://www.valimised.ee/en)
投票率への影響
このように、オンライン投票は年々盛んになってきてはいるが、投票率自体に上昇傾向は見られない。
(画像引用元:IFES https://www.electionguide.org/countries/id/69/)
オンライン投票が導入される1995年の総選挙では投票率が69%だったのに対し、直近の総選挙の投票率は63%だった。手軽に投票できることは、選挙権の行使には影響してないことがわかる。政府への助言機関のアドバイザーは、「選挙に投票したい人は記入式でもオンラインでも投票をするし、興味がない人はいくら手軽にできたところで投票をしない。」と述べている。
(引用元:CGTN I-voting: What can the U.S. learn from Estonia’s online elections? – CGTN
https://newseu.cgtn.com/news/2020-11-07/I-voting-What-can-the-U-S-learn-from-Estonia-s-online-elections–VcTflh3pdu/index.html)
まとめ
世界でいち早く選挙におけるオンライン投票を実現したエストニア。実施当初のユーザー数は少なかったが、年数を重ねるごとに利用者数が増加していった。
一人一台はスマホやパソコンを所有し、タイムパフォーマンスが重要視される現代において、ネットを介して手軽にできるシステムを構築することは必要不可欠である。
エストニアは国家レベルでネットの活用を推進しているため、オンライン投票に限らずネットを介した生活を便利にするサービスはこれからも継続して増えていくことが予想される。